香港の象徴「高層マンション群」鉄道との深い関係 火災発生の団地も「郊外路線の電化」と同時期完成
一方で、その「背骨」に張り付くように建てられた高層公営住宅は、築40年を超えている。駅前のバスターミナルや商店街と一体化したこれらの団地群は、香港郊外の「当たり前の風景」になった。筆者も、そうした高層住宅に長く暮らしていた一人である。
MTRは現在、1980年代以降に使われてきた電車などを並べた展示企画「『站見』鐵路展(Station Rail Voyage)」を紅磡駅で開いている。中国本土直通列車は高速鉄道に移行したが、かつては紅磡駅が中国直通列車の始発駅であり、展示会場はその当時のホームなどを使用している。
展示では、KCRの電化時に投入されたイギリス・メトロキャメル製の電車や、同車両をベースに輸送力の増強を図ったリニューアル車両、近畿車輛が香港返還直後の1998年に納入した広州直通列車の2階建て車両「KTT」の編成などが展示されている。「郊外ニュータウンの形成過程と鉄道の役割」を改めて見直すことができるイベントと言ってよい。
香港ニュータウンの今後は?
鉄道やバスは、車両や駅設備を少しずつ更新できる。しかし住宅は「住みながら直す」しかない。香港では、バスや鉄道では車両や施設の近代化が順調に進んだ一方、1980年代にニュータウンと呼ばれた住宅群は建物の経年劣化と居住者の高齢化が進み、居住環境の改善と安全対策が大きな課題となっていた。
今回の火災は、単なる老朽化や不運ではなく、交通インフラと住宅の「更新の進み方の非対称」が、郊外ニュータウンという空間の中で蓄積されてきた結果なのかもしれない。
鉄道によって拡張され、鉄道によって支えられてきた香港のニュータウンは、これからどこへ向かうのか。「鉄道と高層住宅のセット」としての都市づくりの絵を、この先も描き続けるのか、それとも別のかたちに向かうのか――今回の火災は、その問いを静かに突きつけているようにも見える。
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