香港の象徴「高層マンション群」鉄道との深い関係 火災発生の団地も「郊外路線の電化」と同時期完成
香港は、中心部である香港島、対岸の九龍半島、そしてその背後に広がる新界の、主に3つのエリアによって構成されている。今回の火災が起きた団地が位置するのは前述の通り新界で、鉄道駅でいうとMTR東鉄線の大埔墟駅の近くにある。
同線は九龍半島の先端から中国本土、広東省の広州を結ぶ「九廣鉄路(Kowloon-Canton Railway, KCR)」として、当時のイギリス領香港側区間が1910年、中国側区間が1911年に開業。第二次大戦後、1949年には中華人民共和国の成立によって”国境”で分断された。
現在は通勤電車が頻繁に行き交う同線だが、かつては非電化の単線で、ディーゼル機関車が客車を牽引して走るローカル線さながらの路線だった。
電化・複線化で沿線開発進展
その姿が大きく変わったのは1980年代である。KCRは1970年代に電化・複線化を決定し、工事に着手。1982年5月には、当時の香港側ターミナル駅だった九龍(現在の紅磡・ホンハム)駅から沙田駅までが電化され、通勤電車の運転が始まった。翌1983年7月には中国国境と接する羅湖駅まで、香港側区間の全線が電化された。
このKCRの電化と高速化により、香港中心部と新界東部を結ぶ通勤輸送力は大幅に向上した。沿線各地で公営住宅が大量に供給され、ニュータウンとして発展。庶民の生活水準も大幅に向上し、鉄道はその基盤となった。今回火災が起きた大埔の高層マンションは、まさにKCRの電化・複線化が完成した1983年に完成したものだ。


















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