「部活動の長所」を見直すべき?保護者調査が示唆する「《地域展開》の問題点」…「運動部」は世帯年収によって"加入率"や"親の負担感"に差
教員の部活動に対する過剰な関与については、22年策定のガイドラインで「週あたり2日以上の休養日の設定」や「部活動指導員や外部指導者の確保」が打ち出されたことなどにより、徐々にではあるが改善に向かいつつある。
「ただし、これは部活動自体の健全化によって達成しつつある成果であり、必ずしも地域展開が教員の過重労働の改善につながるとはいえない」と宮本氏は言う。
「部活動の長所」をもう一度見直す
子ども側の環境整備についても、議論が不十分であると宮本氏は指摘する。
「現状の地域展開の成果は『実施した学校数』『教員の労働時間の減少』といった指標で測られがちで、子どもの問題が置き去りにされています。今後は新ガイドラインの理念『全ての生徒の希望に応じた多種多様な活動に参加できる環境の整備』につながる指標を議論すべきでしょう」
しかしその場合も、スポーツ実施率や体力の向上を掲げる国のスポーツ政策との整合性はどうとるのかという問題があるという。
「実は、休日のスポーツ活動への子どものニーズは必ずしも高くない実態があり、地域展開を進めた場合、休日の地域クラブの活動に参加しない子どもも多いことが想定されます。すべての生徒がスポーツ活動に参加できる環境を整えるのであれば、一律で地域展開を進めるのではなく、地域の実情に応じ、部活動の長所を今一度見直すという方策も考えられるのではないでしょうか」(宮本氏)
例えば、過剰な部活動のあり方は改善したうえで、多くの生徒が部活動を通じてスポーツに参加できる環境を提供していく。ただし学校の運動部でさえも加入しにくい「世帯年収400万円未満」の層に対しては、各自治体が就学支援制度を拡充して周知を徹底することで支える。一方で地域クラブについては、地道に拡充を図りながら、学校と連携できる体制が整った段階で地域展開のあり方を検討していく――宮本氏はそうした方策を提案する。
「まず学校は部活動を健全化し、地域はスポーツ環境を充実させ、そのうえで連携できるところから進めていく。地域展開は、そんな段階的なアプローチが現実的ではないかと思います」(宮本氏)
今、公立中学校の部活動は、そのあり方を根本から問いなおすべき時期に差しかかっているといえる。
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