「部活動の長所」を見直すべき?保護者調査が示唆する「《地域展開》の問題点」…「運動部」は世帯年収によって"加入率"や"親の負担感"に差

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一方で、地域クラブの運営者側の持続可能性を確保することも重要になる。従来部活動は教師の無償に近い労働によって支えられてきた面が大きかったが、同じことを運営者や指導者に強いるわけにはいかない。宮本氏は、「地域クラブへの参加費用を低く抑えつつ、指導者に適正な報酬を支払うためには、公的な財政支援が不可欠」と話す。

宮本幸子氏
宮本幸子(みやもと・さちこ)/笹川スポーツ財団 シニア政策ディレクター。教育関連研究所を経て、2016年笹川スポーツ財団に入職。専門はスポーツ社会学、子どものスポーツ。主に、子ども・保護者・教員を対象とした調査研究を行う。25年4月より現職(写真:笹川スポーツ財団)

さらに、保護者の関与に関する負担を軽減することも必要だ。「学校と保護者の協力体制が強化される中、部活動においても、例えば荷物や飲み物の運搬など、本来子どもが自分でできることまで親がやってしまっているケースが少なくないように感じる」と宮本氏は語る。

「保護者の中で声が大きい人が『子どものためにこれもやろう、あれもやろう』と言い出すと、ほかの保護者は従わざるを得なくなりがちです。そこは指導者やクラブ側が、『保護者の役割はここまでで大丈夫です』としっかり線引きをすることが大切になると思います」

ただし送迎については、特に公的な交通機関が限られる地方では、保護者の協力が不可欠なケースも多い。全生徒が地域クラブに参加できる環境を整えるのであれば、送迎バスの運行など公的な支援も検討する必要があるだろう。

「地域展開」の全国的な推進は適切なのか?

しかし、地域展開をスムーズに進めるための対策論を考える前に、より根本的な問いに立ち返る必要がある。これまで課題となってきた「教員の過重労働の改善」と、「子どもの幅広い活動環境の整備」を実現する方策として、部活動の地域展開を全国的に推し進めることが本当に適切なのかということだ。

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