「部活動の長所」を見直すべき?保護者調査が示唆する「《地域展開》の問題点」…「運動部」は世帯年収によって"加入率"や"親の負担感"に差

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スポーツクラブの加入状況については、世帯年収による格差がより鮮明に表れる結果となった。運動部の加入率では「世帯年収400万円未満」のみがほかの層より明らかに低く、それ以外の層では大きな差は見られなかったのに対して、スポーツクラブでは世帯年収が上がるごとに加入率も段階的に上昇しており、世帯年収と加入率に明らかな相関が見られた。

スポーツクラブ加入状況図

スポーツクラブの1年間の平均費用は、運動部の3倍以上の約15万6000円。この費用負担の高さが、世帯年収ごとの加入率の違いに影響していると推察できる。

さらに、調査では費用以外の負担についても尋ねており、運動部やスポーツクラブでは、「子どもの送迎をする」「子どもの飲み物や食事を用意する」「教員や指導者との連絡や情報共有を行う」「保護者間の連絡や情報共有を行う」ことに多くの保護者が関わっていることがわかった。

とくに送迎を担っている割合は、運動部では63.0%、スポーツクラブでは78.1%に上る。また、世帯年収が低い家庭ほど「送迎や係の負担が大きく、スポーツをさせることが難しい」と答える割合が高くなっているという。

「高年収層では、育児と仕事の両立を支援してもらえる正規雇用の母親も多いため、共働きだとしても時間のやりくりがつきやすい面があります。一方、世帯年収が低い家庭では母親が非正規雇用である場合も多く、時間の都合がつけにくいという事情もあるのではないでしょうか。同じ『送迎』といっても、家庭の経済状況によって対応できる余裕が大きく異なるわけです」(宮本氏)

求められる「低年収層への負担軽減策」

新ガイドラインには、改革理念として、「障害のある生徒や運動・文化芸術活動が苦手な生徒等も含め、全ての生徒が希望に応じて多種多様な活動に参加できる環境を整備」することが謳われている。

だが、ここまで見てきたように、家庭の経済状況がスポーツ活動への参加に影響しており、現状でも部活動でさえ参加が難しい子どもがいる。こうした中で地域展開を単純に推し進めてしまうと、全生徒の希望に応じた環境が整うどころか、家庭の経済状況によってスポーツ参加の機会が奪われる子どもが増える事態が危惧される。

もし今後も地域展開を進めるのであれば、まず低年収層の世帯の子どもでも地域クラブに参加できるように、費用負担の軽減策を講じることが必要だろう。新ガイドラインでも、地域クラブの認定要件の1つに「活動の維持・運営に必要な範囲で、可能な限り低廉な参加費等が設定されていること」が盛り込まれている。

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