「実は南海の要衝」岸里玉出、駅長に聞く日常風景 地元民だけが知る「都会のローカル線」の終着駅

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南海電鉄大阪管区新今宮駅長の砂尾次秀さんは、難波の1駅隣の今宮戎から岸里玉出までと汐見橋線の各駅を管轄する。「難波は別格として、乗降数は新今宮や天下茶屋が圧倒的でも、広さでは岸里玉出がいちばんなのでは。初めて来たときは何と広い駅構内かとびっくりしたが、担当するエリアのほかの駅と同様にしっかりと守っていきたい」と話す。

岸里玉出駅は地元に住む人たちの日常利用が中心だ。また、汐見橋線沿線には大阪府立西成高校があるため乗り換える学生の姿も目立つ。そして「やはり『都会のローカル線』といって写真を撮りに来られる鉄道ファンのお客さまは多いです」(砂尾駅長)。

駅の勤務は2人体制。砂尾駅長は「新今宮や天下茶屋はお客さまがたくさんいて忙しい一方、岸里玉出は最終電車の後に広い構内を2人で点検するので大変ですよ」と語る。

朝の始発前は助役1人で準備をするという。運輸車両部上級主任の上田宙史さんは助役時代、早朝に各ホームや線路を点検したり、遠く離れた出入り口のシャッターを開けたり、エスカレーターやエレベーターの電源を入れたりと、2駅分以上ある構内を端から端までカバーしていた思い出がある。

南海岸里玉出駅 新今宮駅長 運輸車両部主任 ホーム上
砂尾新今宮駅長と運輸車両部上級主任の上田宙史さん。高野線側には改札口はなく、駅を出たり乗り換えたりする場合はホーム北端(画面奥)の階段を降りて連絡通路へ向かう(記者撮影)

駅周辺には何がある?

玉出口にある玉出本通商店街を西へ抜けると国道26号。地下を走る大阪メトロ四つ橋線には岸里駅と玉出駅の両方がある。大阪では誰もが知る「元祖たこ焼き 会津屋」や、派手な看板の激安スーパーの発祥の地でもある。反対に東側へ進むと阪堺電気軌道阪堺線が路面を走る紀州街道(住吉街道)。一帯が昔も今も交通の要衝であることがうかがえる。

南海岸里玉出駅 玉出口改札
岸里玉出駅は改札外通路も距離がある。画面奥に玉出口の改札。南海本線のホームはそのさらに奥の階段上にある(記者撮影)
【図と写真】2つの駅が統合されて誕生した岸里玉出駅。その名残の2つの出入り口はどれだけ離れている?かつての「岸ノ里」と「玉出」それぞれの駅の貴重な記録。高架化工事中に上空から撮影した写真を見ると、駅の巨大さがよくわかる

歴史ある土地だけに駅周辺には史跡や由緒ある神社が点在する。豊臣秀吉が立ち寄ったと伝わる「天下茶屋跡」は天下茶屋駅より岸里玉出駅の岸里口が近い。菅原道真ゆかりの天満宮や、阿部野神社、生根神社などは都会のローカル線に乗って訪れるのにぴったりのスポットと言えそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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