ドコモが「銀行を金融の要」に据える本当の狙い——住信SBIネット銀行「ドコモSMTBネット銀行」改称の裏側

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ポイント、カード、決済——この3つだけでも効果はある。だが銀行が加われば、給与振込、住宅ローン、資産運用と、顧客との接点は格段に深くなる。解約のハードルも上がる。

KDDIはauじぶん銀行を完全子会社とし、「マネ活プラン」で料金プランと銀行サービスを連携させている。12月には銀行連携を強化した新プランも投入した。ドコモも同じ土俵に立とうとしている。

「30年頃には現在の金融売上を倍のレベルにしたい」と前田社長。住信SBIネット銀行の円山法昭社長も「従来の年率10〜20%成長ではなく、はるかに高い成長を目指す」と意気込む。

3社は何を持ち寄るのか

ドコモだけでは銀行は回せない。3社がそれぞれの強みを持ち寄る構図だ。

ドコモが持つのは顧客基盤だ。1億人を超えるdポイント会員、全国約2000店のドコモショップ網。前田社長は「ドコモショップは重要なチャネル。銀行のサービスも、三井住友信託銀行とこれからやっていくサービスも、しっかりお勧めしていきたい」と語った。すでにドコモの販売代理店MXモバイリングが住宅ローンの取り扱いを始めている。

ドコモは『くらしの接点』、住信SBIネット銀行は『テクノロジー』、三井住友信託銀行は『高い専門性』を持ち寄る(3社会見のスクリーンショットより)

ドコモSMTBネット銀行が持つのは住宅ローンとテクノロジーだ。住宅ローン残高は8兆6450億円で国内トップクラス。JALやヤマダデンキなど28社以上に銀行機能を提供する「d NEOBANK」サービスでは、新規口座の7割がこの経路で開設されている。

三井住友信託銀行が持つのは専門性と資本だ。富裕層向けの資産運用、相続、不動産といった領域に強い。今回の発表では、総額800億円の追加出資も明らかになった。

資本再編の中身はこうだ。ドコモが保有する株式の一部(約500億円)を三井住友信託銀行に譲渡し、さらに第三者割当増資(約300億円)も引き受ける。取引後の議決権比率は50%ずつ。買収前はSBIグループと三井住友信託銀行の共同経営だったが、ドコモがSBIに代わった形だ。

なぜ三井住友信託銀行は800億円もの追加出資に踏み切ったのか。住信SBIネット銀行は9月に上場廃止しており、三井住友信託銀行の大山一也社長は「非公開化により、提携はより柔軟な運営が可能になりました」と語った。

住宅ローンを伸ばすには自己資本の裏付けが必要だ。同行の自己資本比率は7.25%で、大山社長は「将来的には8%を目指す」と述べた。三井住友信託銀行は資本に余裕があり、ドコモSMTBネット銀行に資本を入れて住宅ローン事業の成長を後押しする。

興味深いのは、三井住友信託銀行とドコモSMTBネット銀行の役割分担だ。

「金利のある世界では、定型化された住宅ローンはネット銀行のほうが優位性があります。我々も住宅ローンは取り扱いますが、積極的にネット銀行に紹介していきたい」

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