絶滅危惧種のウナギを「これからも食べられる」と喜ぶ日本人に欠けた視点

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
ウナギのかば焼き(写真:筆者提供)

しかしながら、貿易規制しているにもかかわらず、密漁・密輸で中国などに持ち込まれてしまえば、資源回復はおぼつかなくなってしまいます。今回のウナギ属の全種を「付属書Ⅱ」に入れる提案は、違法取引などの抜け道を塞ぐ狙いがありました。中国で養殖されたウナギにも貿易規制をかければ、ヨーロッパからの密輸も、日本などへの輸出もやりにくくなることでしょう。

ヨーロッパウナギの輸出禁止により、中国での養殖には、中国で獲れたニホンウナギのほかに、アメリカウナギ(学名 Anguilla rostrata)が使われています。ところが、そのアメリカウナギは、ニホンウナギと同様に絶滅危惧種(絶滅危惧IB類)になっています。

安易に「養殖すれば何とかなる」と考えない

日本は世界最大のウナギ消費国です。ニホンウナギが激減し、それがヨーロッパウナギに置き換わって絶滅危惧種となり、今度はアメリカウナギを食す――。ウナギを食べてはいけないと言っているのではありません。言いたいのは、資源管理とトレーサビリティーをしっかり行うという大前提を徹底し、ウナギ資源を持続的にしなければならない、ということです。

ウナギの完全養殖の研究がされていますが、それも、どこまで「現在のようにシラスウナギを捕まえて養殖する形」と置き換えられるのかは分かりません。大きな話題となっていたクロマグロの完全養殖は採算が合わず、すでに撤退の方向です。

安易に「養殖すれば何とかなる」と考えず、天然資源をいかに持続的にしていくかが重要なのです。まだまだ、ワシントン条約で規制がかからなくてよかった、という段階ではありません。

片野 歩 Fisk Japan CEO/東京海洋大学 特任教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かたの・あゆむ / Ayumu Katano

東京海洋大学 特任教授。早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事