絶滅危惧種のウナギを「これからも食べられる」と喜ぶ日本人に欠けた視点

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それらの要素を入れたとしても、傾向として増えているようなことはなく、激減していることに変わりありません。だからこそ、ニホンウナギはIUCN(国際自然保護連合)レッドリストで絶滅危惧種(EN)に14年から指定され、国内でも環境省レッドリストで絶滅危惧IB類(EN)に分類されているのです。環境省レッドリストの区分としては、特別天然記念物の「トキ」なども同じ「絶滅危惧IB類」に入ります。

禁漁や、実際に漁獲できる量より極端に漁獲量を減らすといった徹底的な数量管理はされていません。それでも、絶滅危惧種の資源量が回復して増えているというのは、にわかに信じがたいのではないでしょうか。

ウナギ、特にウナギの稚魚であるシラスウナギには、IUU(違法・無報告・無規制)漁業のリスクがあります。SDGs14(海の豊かさを守ろう)の中には、「20年までに、漁獲を効率的に規制し、IUU漁業および破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する」とあります。

しかしながら、その「20年までに実施すべきだった内容」は、ウナギに限らず日本では進んでいませんでした。その原因の一つが、トレーサビリティの実施です。ただしシラスウナギに関しては、今月(25年12月)から、水産流通適正化制度に基づき、16桁の漁獲番号等の伝達により密漁品を排除する制度が始まりました。それを期待しながら、効果が出るよう注視していく必要があります。

なぜEUはウナギで貿易制限しようとしたのか?

ウナギの供給量推移を示したグラフを見ると、昨年(24年)は全体の供給量が約6万トンで、そのうち輸入が約7割を占めています。ウナギの供給量のピークは00年の約16万トンで、8割が輸入でした。輸入先はほぼ中国です。供給量が減少したのは、養殖に使用していたヨーロッパウナギが07年にワシントン条約付属書への掲載決定となり、09年から貿易規制が始まったからでした。

(出所)水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」

ヨーロッパウナギは、絶滅危惧種(絶滅危惧種IA類)と、ニホンウナギが指定されている同IB類より厳しい評価(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種)となっていました。そこで、ワシントン条約付属書への掲載をきっかけに資源回復を図りました。

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