北海道「日本一の赤字路線」の先にあった幻の鉄道 全線完成間近で中止された「美幸線」の未開業区間
8年前の2017年10月、美幸線の未開業区間を北見枝幸駅から仁宇布駅まで車でたどったことがある。私は幻の鉄道の痕跡をたどる際、たいていはバスを使うか徒歩で移動するが、ここはバスの本数が極端に少ないか、そもそも存在しない。徒歩ならバスの本数に制約されることはないが距離が長すぎるし、ヒグマとの遭遇も覚悟しなければならない。
未開業区間は北見枝幸駅から歌登駅の旧予定地までは道道12号に並行し、その先は道道120号に並行するルート。歌登は市街地が形成されているが、それ以外は農地や山地のなかに民家が数軒ある程度だった。
いまも残る路盤やトンネル
この時点で工事凍結から40年近く過ぎていたが、路盤やトンネルなどは草木に埋もれつつも、かなり残っていた。路盤の着工率が「100%」だったうえ、撤去するにも相当な費用がかかるためだろう。それでも、枝幸町の市街地では区画整理で路盤が消失し、川をまたぐ橋梁も治水上の問題からか撤去されていた場所がいくつかある。農地に戻されたところも若干あった。
山間部の北見大曲―仁宇布間は、美幸線の第2大曲トンネルを2車線の道路トンネルに改修したトンネルがあり、トンネルの両側にある牽牛橋と織姫橋にちなんで「天の川トンネル」と名付けられた。交通量は多いとはいえないが、数分~10数分おきに乗用車やトラックの姿を見たから、地域の交通路としてそれなりに役立っているようだった。
かなり残っている路盤やトンネルを見るにつけ、あともう少しで開業できたのにと悔しさがつのる。その一方、簡易軌道とはいえ鉄道が存在したのに廃止して新線を建設し、開業した区間の廃止問題が浮上したのに未開業区間の工事を続けて結局は中止されたことを思うと、大きな違和感を拭えない。「日本一の赤字線」の先に残る幻の鉄道の痕跡は、一貫性のない交通政策の失敗を端的に表しているように思えた。
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