喉頭がん、失った声…「落ち込むより高揚した」ロックスター吉井和哉50代の生き方。栄光を脱ぎ捨て考える"ロックは何を与え、何を奪ったか"

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「いまの若い人たちって、本当に息苦しいと思うんですよ。なんでもカテゴライズされて、怖がって、縮こまって……。でもこの映画を観たら、“自分の生き方をもっと貫いていいんだ”と思ってくれるかもしれない。そうだったら、すごく嬉しいですね」

若者には“自由”を、同世代には“共鳴”を。

『みらいのうた』は、まったく異なる場所にいる人たちの背中を、同時に照らしている。

「使命感? 別にないです(笑)。ただやるだけ」

吉井和哉
(写真:横山マサト)

――最後に聞いてみた。吉井さんにとって“歌うこと”とは?

問いかけると、少し黙り、胸の奥から言葉を引き出すように語り始めた。

「まず、喉頭がんになっても声が残ったこと。それが何よりありがたいんです。歌うって、呼吸なんですよ。呼吸も風も、人の気持ちも、全部“目に見えない”でしょう?」

大切なものほど形がなく、触れることもできない。

魂をメロディに乗せる。でも、それも見えない。

(「歌詞だけは見えるけどね」と少し笑った。)

だがその笑みの奥には、言葉にしない覚悟が、確かに宿っていた。

「だから歌うっていうのは、見えないものを追いかけ続ける作業なんです」

――そこに使命感はありますか?

首を横に振り、穏やかに笑った。

「使命感? 別にないです(笑)。ただ、やるだけ。呼吸するみたいに」

それは、若さでつかんだ“ロックの生き方”とも、成功をまとった“スターの歌い方”とも違う。

歳を重ね、失い、取り戻し、もう一度ゼロから立ち上がるようにしてたどり着いた、“ほんとうの歌い方”だった。

その営みのひとつひとつが──吉井和哉の“みらいのうた”を、今日も静かに形づくっている。

ヘアメイク:Cana Imai スタイリスト:Shohei Kashima(W)

池田 鉄平 ライター・編集者

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いけだ てっぺい / Teppei Ikeda

Jリーグ、国内、外資系のスポーツメーカー勤務を経て、ウェブメディアを中心に活動。音楽一家で育ち、アーティストとしてインディーズでアルバムリリースも経験。スポーツ、音楽、エンタメを中心に取材活動を行っている。

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