喉頭がん、失った声…「落ち込むより高揚した」ロックスター吉井和哉50代の生き方。栄光を脱ぎ捨て考える"ロックは何を与え、何を奪ったか"
成功とは何か。
かっこよさとは何か。
ロックとは何か。
その答えは、年齢と経験とともに形を変えていく。
「この先10年、15年ロックで生きたいなら、もっと“まとも”になりたいんです。靴下ひとつだって、適当なの履いてる場合じゃないな、って(笑)」
破天荒な若さを脱ぎ捨て、背負ってきた過去と折り合いながら、それでも前へ進む。
その歩く姿こそ──いま吉井和哉が鳴らしている“ロック”だった。
「若い頃は、わかりやすい“成功”ばかり追いかけてました」
――“50代以降の人生”に希望を持つ人へ、どんな言葉を届けたいですか?
吉井は、少し照れくさそうに笑った。
しかしそのまなざしの奥には、長い年月を通り抜けてきた人間だけが持つ、静かな確信が宿っている。
「若い頃は“成功”って、いい車とかブランドの服とか……そういう“わかりやすいもの”だと思ってたんです」
だが、人生の後半戦に差しかかった今、その答えはまったく違う。
「最近は古着ばっかり(笑)。家を建てるなら、日本の湿気でいつ壊れてもいいような家で十分だと思うんです」
派手な象徴も、ステータスも、もう必要ない。
むしろ“なくていい”と思えるところまで、価値観は変わった。
なぜなら──
「いちばんの財産は、健康な体と、そばにいてくれる人。本当にそれだけでいいんです」
パートナーでも、親友でも、家族でもいい。
“誰かと生きている”という事実こそが、人生の根っこを支えてくれる。
吉井は、ふっと映画の根底にも通じる感覚を口にする。
「僕もEROも、若い頃は本当に好き勝手に生きてきた。タバコに酒に、無茶ばかりして……そのツケが回ってきたのか、気づけばお互い病気になってしまった。まあ、“天罰”みたいなもんですよ(笑)」
自嘲気味に笑うが、その言葉の奥には悲観ではなく、どこか晴れた空気がある。



















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