喉頭がん、失った声…「落ち込むより高揚した」ロックスター吉井和哉50代の生き方。栄光を脱ぎ捨て考える"ロックは何を与え、何を奪ったか"

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デヴィッド・ボウイが『Blackstar』を作ったときと同じように、“死生観が急に実体を持つ瞬間”がある。

「諦め半分、納得半分。でも──じゃあどうする?ってスイッチが入った。歌えないなら、詩を書けばいいと思ったんです」

死と向き合いながら紡いだ言葉には、もう嘘がない。

命、存在意義、そして人への思い。削ぎ落として、なお残った“確信”が、そこにあった。

「ロックは何を与え、何を奪ったのか──“影”の向こうに見えたもの」

吉井和哉
(写真:横山マサト)

そして吉井は、もうひとつの問いに向き合う。

「ロックによって手に入れたもの。ロックによって失われていくもの」

田舎を抜け出すため、“ロックスターになるしかない”と賭けた若き日。彼はその賭けに勝ち、富も名声も、望んだものすべてを手にした。

だが──病と向き合い、「あと20年、生きられるか」という現実的な数字を突きつけられたとき、その成功の輪郭は別の形へと変わり始めた。

「得たお金って、そんなにいるか?って思うんです。必要は必要。でも、それを得るために失ったものもある。ロックって、生き方を差し出すことでもあるから」

その思いを象徴するのが、盟友・EROの存在だった。

脳梗塞で倒れ、自由に動かない体。お金もない。それでも──そのたたずまいには圧倒的な“かっこよさ”があった。

「EROには強烈な色気があるんです。僕は成功した。でも病気になって、声も出なくなる。じゃあ、どっちが“かっこいい”んだろう?映画を観て、“ああ、俺はまだフェイクスターだな”って思いました」

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