【産業天気図・住宅/マンション】価格高騰で販売にブレーキ、選別が一段と加速へ

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住宅・マンション業界の天気は「曇り」。とくに、ここ数年来ブーム状態にあったマンション販売に変化の兆しが出てきた。マンションの販売状況を調べているトータルブレインによれば、「大きな潮目の変化が出ている」(久光龍彦社長)。
 代表的な指標である首都圏のマンション販売(年間販売戸数)は、1999年以降、歴史的な高水準である10万戸前後が続いてきた。その背景としては、郊外居住者が利便性を求めて都心に回帰する流れに加え、団塊ジュニア世代が1次取得者として購入する動きが下支えした格好だ。ところが、昨年あたりから都心中心に用地取得が過熱化し、土地価格の上昇が物件価格を押し上げる動きが強まってきた。このため、マンション業者は供給を絞り始め、それが販売を鈍化させるという展開につながっている。供給戸数を見ると、「昨年1月~6月前半で前年同期に比べて4000戸減となり、昨年1年間で、供給戸数は8年ぶりに8万戸割れとなった。今年に入ると、6月までの前半だけで、前年同期比でさらに多い6000戸の供給減になっている」(久光社長)と言う。
 さらに、今年に入ってマンション業者にとって想定外だったのは、予想以上の建築費の高騰だ。これは赤字受注が当たり前だったゼネコンがまともな価格を要求しだした結果だと言われている。このため、マンション業者としては、土地代、建築費とダブルで上昇する開発コストを”新・新価格”などと言われる販売価格の引き上げで吸収しようとしている。ところが、購入者サイドは、所得対比での割高感の強まりや景気の先行き懸念から、これまでのような買い急ぎは見せていない。マンション販売にブレーキがかかりだしていると言える。
 今後については、購買層の選別強化により、売れるものとそうでないものの差が一段と拡大するだろう。例えば、都心の利便性の高い物件は中古でも売れる。しかし、郊外や都心でも利便性の低い物件は売れ残る、という具合だ。さらに、企業間でも体力勝負の様相が強まりそうだ。つまり、大手と中堅以下では一段と格差が拡大すると見る向きが多い。つまり、大手は資金面でも耐震性などの安全対策面でも優位にあり、時間をかけて自社物件を販売していける。しかし、中堅以下では銀行からの圧力もあって資金繰りに窮し、投げ売りや用地のままの転売も増えてきそうだ。
 個別企業動向としては、都心に好立地案件を多く抱え、ブランド力のある三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>、野村不動産<3231>、東急不動産<8815>などは多少の減速があっても収益への影響は少ない。また中堅ながら都心好立地案件が多いゴールドクレスト<8871>、プロパスト<3236>などは底固いとみられる。が、その下の企業は今後のマンション販売状況に注意が必要だ。例えば、準大手の藤和不動産<8834>、大京<8840>、コスモスイニシア<8844>、日本総合地所<8878>などだ。
【日暮 良一記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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