「1ドル160円で止まるのか?」サナエノミクスの正否を見極める"たった1つの視点" 「電気代補助」より「子育て支援」が効くワケ

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一方で、子育て支援策はお金の流れる先が異なる。粉ミルクなど一部に輸入品はあるものの、ドル買いの規模はエネルギー輸入とは比べものにならない。

このように、長期的な円安を生むのは、投機や金利差による投資のお金の流れではなく実需としてのドル買いだ。であれば、円安を抑えるために本来必要なのは、実需としての“円が買われる”構造を取り戻すことである。

聞かなくなった「メイドインジャパン」

今の日本では、円安になっても海外から円が買われない。日本の商品がかつてほど売れず、“円を買う理由”が生まれていないのだ。その結果、円安によって家計が苦しくなるのに、輸出は伸びないという、本来なら起きないはずの現象が起きている。

電気代も小麦もガソリンも値上がりし、「いったい何が起きているのか」と言いたくなる人も多いだろう。

正直なところ、書籍の中でも思わず「責任者、出てこい」と書いてしまった。

「責任者、出てこい」
そう叫びたくなるのだけど、いったい誰に言えばいいのだろうか。長い間、「円安は日本経済に良い」と言われてきた。その話を信じていたのに、円安が進むほど、生活はどんどん苦しくなっている。(中略)
1980年代、「メイドインジャパン」が世界を席巻した。日本製の自動車や家電、半導体が海外で高く評価された。円安になれば、海外の人には割安に映り、売れ行きが伸びる。日本企業は潤い、給料も上がった。円安はたしかに追い風だった。
でも、それはもう過去の話だ。
今の日本には、世界に誇れる商品が少なくなっている。円安でも日本製品は売れない。それどころか、家電や機械、さらには魚介類など、かつて輸出していたものを今では輸入に頼っている。(中略)
一般的には、物価上昇に給料が追いつかない理由として、円安や原材料の高騰が挙げられる。しかし掘り下げると、その根本には「人材不足」という現実がある。私たちが必要なモノを作る力が減り、世界が欲しがるモノを生む力も弱まっているのだ。
(書籍『お金の不安という幻想』より/一部筆者にて改変)

このように、円安が進んでも輸出が伸びない背景には、人手不足という構造的な問題がある。

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