「1ドル160円で止まるのか?」サナエノミクスの正否を見極める"たった1つの視点" 「電気代補助」より「子育て支援」が効くワケ
それは──「お金がどこへ流れているのか?」という視点だ。
この流れを押さえるだけで、「円安」「金利上昇」「財政不安」「物価高」といったバラバラに見える現象が、1本の線で結びつく。すると見えてくるのは、政府の借金そのものではなく、「その使われ方」が為替を左右している事実である。
為替市場を動かす「実需」という力
為替市場でドルが買われる理由は、大きく2つしかない。
1つは、外国の商品を買うための「実需」としてのドル買い。もう1つは、円安に賭けたり、金利差などを狙ったりする投資(投機)だ。
たとえば、電力会社が発電用の天然ガスを輸入する際、支払いのためにドルを買う。これが典型的な“実需”であり、支払ってしまえばそのドルは戻ってこない。
一方で、投資家が円安に賭けてドルを買う“投機筋”の動きは性質が異なる。どれだけドルを買っても、利益を確定するために、いずれ必ずドルを売って円を買い戻す「逆取引」が発生する。
つまり、この手の取引は短期的な値動きは作れても、長期的な円安の押し下げ要因にはなりにくい。だからこそ、円安が続くかどうかを決める本当の力は、投機ではなく“実需のドル買い”にある。
サナエノミクスで財政支出が増えると、「借金が増えるから円が売られる」と考えて投機的な取引が増える。しかし、いずれ逆取引が発生するため、長期的な円安の要因にはならない。
為替を持続的に動かすのは、ドルを買って外国の商品を買う「実需」。片道の流れのほうである。だからこそ重要なのは、借金の額そのものではなく、財政支出によって“何を買い、どこへお金が流れるのか”という点だ。
その典型が、電気・ガス代の補助である。補助によって電気代が下がれば、気兼ねなく電気を使う人が増え、使用量は増える。その裏側で輸入エネルギーの支払いのために、黙ってドルが買われ続ける。円安圧力が増すことになる。
つまり、気づかないうちに巨額のお金が海外に流れ、円安圧力がじわじわと高まる構造が生まれる。円安が進めば、他の輸入品の価格まで押し上げ、物価全体が上昇していく。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら