「20奪三振」"怪物"江川卓が甲子園で本領を発揮した"伝説の試合"の真実

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敗戦の感傷はなく、小倉南は監督以下ナインも悔いなく精一杯やったという晴れ晴れとした顔で甲子園を後にした。

一方試合後の作新江川は表情から完全に笑顔が消え、報道陣の矢継ぎ早の質問に対しても、

「別に記録も作れませんでしたし、これといって何も話すこともありませんので……」相も変わらずぶっきらぼうに答える。想像以上に押し寄せるファンと群がるマスコミ陣の対応に困惑気味だった。

観客の興味は、江川のノーヒットノーラン

ベスト8が出揃った。戦前優勝候補と呼ばれた高校が一様に残っていた。広島商業、東邦、横浜、日大一、天理、鳴門工業、今治西、そして作新。8校のうち3校が関東勢だ。

4月3日準々決勝は四国の雄・今治西。四国大会を走攻守揃った圧倒的な勝ち方で優勝して甲子園に乗り込んだ。当然、優勝候補の一角である。選手たちは「絶対、江川を打ってやる!」と自信満々に対戦するのを楽しみにしていた。

開幕第一戦で江川卓初見参ということで初戦の北陽戦ばかりが取りざたされるが、数字的にはこの準々決勝の今治西戦が一番である。もはや観客の関心は、江川はいくつ三振を取ってノーヒットノーランをやるかだ。

一回裏の今治西の攻撃。一番バッター曽我部世治が「江川江川と言っても同じ高校生だろ。俺が打ってきてやるから見てろよ!」スパーン、スパーン、スパーン三球三振。ベンチに戻ってくると「打てる、打てるぞー」とナインに檄を飛ばす。

次の打席もすぐさま三振してベンチで「打てるぞ打てるぞ」と手を叩きながら強がる。

最終打席でもクルクルと回って三振し戻って「おいおい打てる打てる!」とカラ元気の声を出すやいなや「お前が打ってねえじゃんか」と周りに突っ込まれる始末。結局、曽我部は3打席3三振。気迫だけでは打てなかった。

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