「2階建て鉄道車両」なぜヨーロッパには多いのか 通勤列車が多数派、日本の「特別感」と違う導入理由

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では、実際に2階建て車両はヨーロッパの中でもどういった地域で運用され、どんな車両があるのだろうか。主要な国を見ると、たいていは何らかの形で2階建て車両を導入している。

積極的に2階建て車両を導入してきたのがフランスだ。高速列車TGV-Duplex(デュプレックス)が有名であるが、もともと1930年代からパリ周辺を中心に2階建て近郊型車両が導入されるなど歴史は長い。郊外からパリ中心部へ通勤する人たちが着席できるよう、少しでも座席数を増やそうという発想から生まれた2階建て車両は、パリ周辺の近郊輸送では欠かせない存在となっている。

SNCF Transilien Z8800
パリ周辺の近郊輸送で活躍するZ8800型電車(撮影:橋爪智之)
SNCF Z8800 2階席
圧倒的な収容力を誇るZ8800型の2階席。横2+3列の座席配置だ(撮影:橋爪智之)

「2階建て3ドア車」も走るパリ

中でも興味深いのは、郊外からパリ市内中心部へ直通する急行地下鉄RER-A線で使用されるMI09型車両で、なんと2階建て車両ながら3ドアを有する。

RER-A線は、パリ市内でもとくに混雑する繁華街を抜けていく路線だ。そのため、2階建て車両とはいえドアの数を増やして少しでも乗降時間のロスを減らそうという設計なのだろうが、2階へ通じる階段は両端2カ所の出入り口のみで中ドアにはなく、2階部分は通り抜けできない個室のような行き止まりのスペースというユニークな構造となっている。混雑はするが、どうにか座席数は増やしたい、という執念を感じる。

MI09 RER-A
非常に珍しい3ドア2階建て構造を採用したMI09型(撮影:橋爪智之)
【写真】横から見るとよくわかる「2階建て3ドア車」のMI09型
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