JR東海リニア「車両の進化」と工事費膨張の明暗 物価高や難工事で4兆円増額、開業はメド立たず

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その意味で、目下の課題は国民のリニアに対する期待感をいかに高めるかという点にある。11月6〜7日に一般向けに開催されたリニア体験乗車は多数の応募があり、平均倍率は過去最高の約170倍になったといい、全国的な関心度は高まっているといえる。

11月9日には23年10月に貫通した第一南巨摩トンネル(山梨県富士川町)の工事現場を初めて一般公開した。地元富士川町で開催された「甲州富士川まつり」と連携し、まつり会場からシャトルバスも出て、会場間の輸送が行われた。鉄道好きという小学生の子供2人とともに家族4人で訪れて坑内を見学した北杜市内に住む男性は「トンネルの大きさに驚いた」と話した。

第一南巨摩トンネル
第一南巨摩トンネルの工事現場一般公開の様子=2025年11月9日(記者撮影)

工事を担当するJR東海山梨西工事事務所の鈴木一真所長も朝から坑内で来場者に工事内容の説明をしたり、質問に答えたりしていた。「多くの来場者にお越しいただき、お話を聞いていると、みなさん高い関心を持って見学していると感じている。こういう機会を設けることはとても大事だと思った」と鈴木所長は話す。

JR東海 山梨西工事事務所長
JR東海山梨西工事事務所の鈴木一真所長(記者撮影)
【写真をもっと見る】リニア新型車両「M10」は天井にルート上の走行位置や速度などが映し出されるのが特徴。映像を映し出すプロジェクターやリクライニング機能を廃止した座席など車内の様子に加え、従来の「L0系」の車内も

地元へのPRにもっと力を

11月下旬からは大井川流域8市2町で「大井川の水を守るための取組みに関する説明会」が行われ、JR東海の担当者が住民の質問に直接答える。静岡工区の着工に対して県がゴーサインを出すためには、流域市町の住民の理解を得ることは不可欠だ。そのためにも重要な機会だといえる。

以前と比べれば、JR東海がリニアの工事現場を公開したり、説明会を行ったりと、情報公開する機会は格段に増えたと思う。ただ、先ほどの北杜市在住の男性は「リニアによって地元にどんなメリットがあるかがわからない」と話していた。県や自治体もこうした点をPRをしているはずだが、それが伝わっていない人もいる。リニア体験乗車の約170倍という高倍率も裏返せば「体験できていない人が多い」ことの表れだ。リニアの開業まで最短でも今から10年ある。その期間を使って今以上にリニアの周知を進めるべきだ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げ。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に定年退職後の現在は鉄道業界を中心に社内外の媒体で執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京交通短期大学特別教養講座講師。休日は東京都観光ボランティアとしても活動。

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