JR東海リニア「車両の進化」と工事費膨張の明暗 物価高や難工事で4兆円増額、開業はメド立たず

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乗客にとって気になるのは座席である。背もたれの高さと座面幅がL0系よりも広がり、ゆったりとした座り心地に改良されたほか、耳が当たる「バケット」を大きくして重厚感を持たせた。リクライニングは背中と座面が連動するタイプに変更した。従来、前の座席の背面にあったテーブルは肘掛けと連動するタイプに改められた。

L0系改良車 車内
L0系改良型の客室(撮影:尾形文繁)

また、頭上の荷物棚を小型化し、座席の足元に収納するようにした。車端部には大型荷物の収納スペースも設置された。従来のL0系の座席と比べると大きな変化である。

しかしこれがゴールではなかった。JR東海はさらに車両のブラッシュアップを続けた。そして完成したのが新型車両M10である。L0系改良型先頭車の車内に導入された吸音効果の高い膜素材がM10にも採用されたが、表面が平滑であるという利点を生かし、天井のプロジェクションマッピングに使われている。

車両と裏腹なインフラ建設

オレンジ色の生地を使った座席も「これまでの車両とは違う」ことを予感させる。座席はリクライニング機能が廃止された。15度ほど後ろに傾いた状態で固定されており、不便は感じない。終着駅で進行方向が変わる際に、座席が自動的に回転する機能も追加された。この機能で乗客の快適性が向上するわけではないが、整備作業の省力化につながる。

リニアM10 座席
M10の座席はリクライニング機能なしだ(記者撮影)

L0系、L0系改良型、そしてM10。過去の報道公開のタイミングでそれぞれの車両に乗車してきたが、車両の進化に伴い、振動、騒音や耳ツンがかなり改善されてきたと感じる。「走行試験データを活用して各種の調整を実施している」とJR東海の担当者が説明する。

着陸時に飛行機のようなドンという衝撃が感じられないのは、「着地の前後で減速度を少し緩めるという制御を地上側で行っているため」だという。それによって乗り心地を悪化させることがないように調整しているのだ。吸音効果の高い膜素材は車内の反射音軽減につながっているだけでなく、天井に旅客案内のほか青空を映し出すことで閉塞感の解消につなげる狙いもある。

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