JR東海リニア「車両の進化」と工事費膨張の明暗 物価高や難工事で4兆円増額、開業はメド立たず
ふいに車輪の走行音が消えた。地上約10cmの浮上走行に移った瞬間である。「どこにも接触していない。空気を切る音だけ。音が変化したのがおわかりいただけたと思います」。JR東海の担当者が説明した。浮上走行というとフワリと走行して無音のイメージがあるが、そんなことはなく、ゴーッという音がそれなりにする。
天井に表示される速度はぐんぐん大きくなっている。東北新幹線の持つ新幹線の国内最高営業時速320kmを突破した。「時速350kmくらいが車輪走行の限界。ここからがリニアの特徴です」と担当者。リニアはその後も時速400km、450kmと加速を続け、発車から3分程度で時速500kmに達した。2分間ほど500km走行を続けると、車両は減速を始め、時速143kmで車輪走行に戻った。
「離陸」時よりも「着陸」時のほうが速度が遅いのは、車輪への負担を軽減しているためだという。「それによって、車輪の交換周期を少し伸ばすことができます」。
車輪走行に移った後は、通常の列車と同じように減速を続け、停車した。8分間の旅が終わった。
車両の改良は続く
品川―名古屋間の建設工事とともに、車両の改良も絶えず続けられている。2013年8月、初の営業仕様として製造されたL0系の本格的な走行試験が始まった。約3年半にわたる試験を経て、17年2月に国土交通省の実用技術評価委員会から「営業線に必要となる技術開発は完了した」というお墨付きが得られた。その後も保守効率化や快適性向上に向けた改善が続けられ、20年8月にL0系改良型が完成した。
L0系改良型は先頭車両と中間車両の2両。従来のL0系と組み合わせて走行する。最大の特徴は先頭車両に窓のようなスペースが設けられたことだ。運転士が乗っているわけではなく、この場所にカメラが設置されている。また、先頭形状を変えたことで空気抵抗が約13%低減し、消費電力と騒音の低減につながった。さらに先頭車の車内には吸音効果の高い膜素材が採用された。


















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