〈沸騰!CDMO市場〉欧米ファーマの契約獲得でアメリカ新工場は稼働前に"完売"→「富士フイルム」が総額1兆円超投資で狙う「バイオ医薬のTSMC」

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CDMO事業に力を注ぐ富士フイルム。年内に稼働させるタンクは、すでに「完売」した

富士フイルムが仕掛ける過去最大規模の投資が、いよいよ動き出す。

その舞台は、アメリカ南東部のノースカロライナ州ホーリースプリングス市。涼しげな秋風に揺れる木々を抜けると、真新しい巨大工場が視界いっぱいに広がった。がん治療などで使われる抗体医薬品など、バイオ医薬品の製造を受託する新拠点が、今年ついに稼働する。

総敷地面積は約60万7000平米と、東京ディズニーシー1個分に匹敵。9月下旬に現地で開かれたオープニングイベントでは、工場内部が公開された。

8基ある2万リットルの培養タンクの高さは約7メートル。3階分の階段を登ってようやくタンクの上部がうかがえるほどだ。別棟では追加の8基を建設中で、2028年までに全16基が稼働する予定。年間で最大5000万回投与分の製造が可能となる。

稼働前に「完売」した製造タンク

富士フイルムがCDMO(医薬品開発・製造受託)事業に参入したのは11年。写真フイルム事業からの転換を図る中で、19年にデンマークのバイオジェン製造子会社を約990億円(当時のレート)で買収。大規模設備での受託を本格化させた。

買収を含むCDMO事業への累計投資は1兆円超。今回完成したノースカロライナの新拠点は、ゼロから自前で築き上げたその集大成であり、投資額は約32億ドル(当時のレートで約3800億円規模)。創業91年の歴史でも最大規模で、「社運が懸かったプロジェクト」(富士フイルムOB)なのだ。

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