〈沸騰!CDMO市場〉欧米ファーマの契約獲得でアメリカ新工場は稼働前に"完売"→「富士フイルム」が総額1兆円超投資で狙う「バイオ医薬のTSMC」
年内に稼働するタンク8基はすべて長期契約で埋まり、稼働前に「完売」状態となった。契約先にはジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)グループやリジェネロンなど、欧米の大手製薬企業(メガファーマ)が名を連ねる。J&Jとは30億ドル、リジェネロンとは20億ドルといった内容で、いずれも10年間と長期にわたる契約だ。
 
通常、製薬企業は工場の稼働実績を重視するため、稼働前に大型契約が成立することは異例中の異例。市場関係者からは「驚いた、というより本当にびっくりした」との声すら聞かれる。
大型受注を勝ち得た背景には、デンマーク拠点で培った実績がある。バイオ医薬品の製造は、わずかな条件のズレが品質に直結するため、工程管理の精度が命。1回のバッチ(製造単位)ごとの結果にブレが大きいとされるが、富士フイルムはバッチ成功率98%超を達成しており、ほぼ完璧に近い水準を示している。
さらに、地政学的な追い風もあった。トランプ政権において薬価抑制策や関税措置が検討される中で、製薬大手は供給拠点をアメリカ国内に戻す動きを強めた。数年前から進めていた大型投資は、この流れを真正面から捉えた格好になった。
CDMO事業で掲げる高い目標
世界市場では、スイスのロンザや韓国のサムスン・バイオロジクスなどが巨額投資で先行する。富士フイルムは売上高ベースでは「2番手群」に属するが、ここから一気に設備を立ち上げ、28年までに製造能力を5倍(23年度比)に増強する計画だ。
新工場の敷地は半分が残されており、需要が高まれば追加投資にも踏み出せる余地はありそうだ。
富士フイルムはCDMOや半導体材料への積極投資をテコに、30年度に売上高4兆円(24年度は3.1兆円)を目指している。かねて富士フイルムの後藤禎一社長は「バイオ医薬品のTSMCを目指す」と話し、CDMO事業には利益を稼ぎ出すキャッシュカウとなることが期待されている。
            記事をマイページに保存
            できます。
            無料会員登録はこちら
            ログインはこちら
          
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら





 
         
         
         
        
       
           
           
          
         
          
         
         
         
         
        












無料会員登録はこちら
ログインはこちら