午前8時からはじまる朝食付き工場見学。ここだけの"焼きたて"笹かまがふわっと絶品!1日に約10万枚生産する仙台・鐘崎「笹かま館」
筆者は、リニューアル前の工場見学にも参加したことがあるが、そのときもすでに製造が終わり、清掃の様子しか見られなかった。工場見学の中でも稼働中の製造ラインに魅力を感じる筆者にとっては、体験価値が薄れてしまい、正直もの足りなさも感じていた。
かまぼこ職人がアテンド
笹かまの製造は、朝の3〜4時には始まっている。焼いている様子が見られるのは朝8時ごろ。そこで同社は、思い切って朝から工場見学を行うことにした。
リニューアル当初は「そんな朝からお客様は来てくれないのでは」と社内でも懸念の声があった。 しかし、実際に始めてみると「こんな時間から工場が動いているなんて知らなかった」「朝食も食べられて楽しい」と参加者からは好評を得た。
案内してくれるのは、現場を知る職人たち。
「現場の空気を直接伝えたくて、アテンドは全員、かまぼこ職人にしました」と渡邉さん。
職人ならではの視点で、工程のポイントや素材へのこだわりを語ってくれるため、リアルな話に引き込まれる学びと発見の時間になる。この日も、参加していた子どもからの質問に現場知にもとづく言葉で答えていた。
最初のコーナーでは、「かまぼこ」という名前の由来を学ぶ。諸説あるが、平安時代に魚のすり身を竹に巻きつけて焼いた姿が「蒲(がま)の穂」に似ていたことから「かまぼこ」と呼ばれるようになったといわれている。また、形が武器の「鉾(ほこ)」に似ていたことから「蒲鉾(かまぼこ)」と書かれるようになったとも。
魚のすり身を焼いて保存食としていた当時の知恵が、今では仙台名物・笹かまぼことして受け継がれている。歴史を知ると、1枚の笹かまに込められた文化の厚みが感じられるから不思議だ。
鐘崎のかまぼこには、スケトウダラや吉次(きちじ)など数種類の白身魚が使用されている。
「作り方自体は他社と大きく変わらないと思います。でも、私たちは化学調味料・でんぷん・保存料を一切使いません。量産の中で無添加を貫くのは難しいですが、素材本来のうまみを最大限に引き出すことを何より大切にしています」
この無添加への挑戦こそが、鐘崎のブランド価値の根幹だという。工場見学を通じて、そういったこだわりや想いを消費者に直接伝えることが同社の狙いでもある。


















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