サナエノミクス「責任ある積極財政」のワナ 成否のカギを握る企業への"賃上げ圧力"

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生産的政府支出とは、公共事業、教育、防衛など、経済の成長基盤に投資する予算のことです。この生産的政府支出こそが、日本経済を底上げするための投資であり、これによって経済成長が促進されます。

この生産的政府支出が長期間にわたって伸びていないことが大きな問題です。1990年度には25.1兆円だった生産的政府支出は、1994年度に初めて30兆円を達成して以降、ほぼ横ばいで推移しています(下図表)。

さらに、この生産的政府支出の対名目GDP比率が低いという問題もあります。1990年度の5.4%から低下し、2025年度には4.8%にまで減少しています。

世界的に見ても日本の生産的政府支出は少ない

日本経済を改善するために政府が使っている予算は、GDPのわずか5%程度にすぎません。試算によればEUではこの比率が約12%となっており、OECDのデータでも、世界的には防衛費が2.5%、教育が5%、公共工事などが3.5%、合計11%とされています。

GDPは分解すれば、以下のようになります。

GDP=「消費者の数」×「もの・サービスを消費する回数」×「商品の単価」

消費者の数が減っている以上、物やサービスが消費される回数を増やすか、単価を上げることが重要です。ただのインフレであれば、実質GDPは増えませんので、設備投資を増やして、付加価値を高めて経済を成長させないといけません。

日本の高齢化のスピードと規模は深刻なため、日本は諸外国より投資をする必要があるにもかかわらず、実際は逆に少なくなっています。ここに大問題があります。

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