過去に女性首相を選出した議会制民主主義国においては、興味深いことに保守政党のほうが先であることが多い。英国保守党は過去に3人(マーガレット・サッチャー、テリーア・メイ、リズ・トラス)の女性首相を送り出しているが、労働党は党首でさえ男性ばかり(臨時党首を除く)である。現在、欧州でもっとも安定した政権を率いているイタリアのジョルジャ・メローニ首相などは、ネオ・ファシズムの衣鉢(いはつ)を継ぐ右派政党「イタリアの同胞」の党首である。
「最初の女性首相」は個性的で型に当てはまらない
どこの国でも「最初になる人」は、個性的で型にはまらないタイプが多いものなのだ。すでに3人の女性首相が誕生しているニュージーランドの場合、最初のジェニー・シップリー(1997~99)は農家の「肝っ玉母さん」タイプだった。当時のジム・ボルジャー首相があまりに不人気で、このままでは次の選挙に勝ち目がないというときに、首相の外遊中に反主流派を率いて国民党を乗っ取ってしまった。
このシップリー政権に挑戦したのが、労働党の「鉄の女」ヘレン・クラークであった。同国初の「女の戦い」を制し、1999年から2008年まで3期9年という堂々の長期政権を築いている。首相退任後は国際機関に移り、女性初のUNDP総裁を務めている。
3人目の女性首相はジャシンダ・アーダーン(2017~23)である。コロナ対策で名を上げたり、在任中に出産して産休を取ったりで有名になったが、3人目ともなると、「鉄の女」でも「肝っ玉母さん」でもなく、普通のタイプの女性が首相になるものらしい。まあ、この人もかなりの変わり者であることは、間違いないのだけれども。
ともあれ、10月21日に誕生したばかりの「日本初の女性首相」は、その後の世論調査などを見る限りかなり好評のようである。
特に若い世代の支持率が高い。総じてオールドメディアが高市氏を厳しめに評している反面、SNS世論は彼女に対して好意的だ。自民党はようやく、今の時代にあった人物を掘り当てたのかもしれない。「選挙に強い」と思われていた石破茂総裁の下で、衆議院と参議院選挙で2連敗した自民党にとっては、文字通り崖っぷちで選び出した新総裁ということになる。


















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