まもなく20歳の小泉セツ、生涯をともにするはずの夫が…朝ドラ「ばけばけ」逃亡した夫を追いかける「凄い行動力」
ドラマでは、為二をモデルとした銀二郎は松江をあとにして東京へとたどり着く。実際の為二は、大坂へと逃げたようだ。場所は違えど、セツがとった行動はドラマと同じである。連れ戻そうと逃亡先まで出向いているのだから、なかなかアグレッシブだ。
だが、結局、セツの説得も届かなかった。為二は松江に帰ることを拒否。セツはむなしく一人で、故郷へと戻っている。
どん底から人生を変える出会いへ
貧しさが離縁の背景にあるだけに、稲垣家へと養女に出された自身の運命を恨みそうなものだが、セツはここまで育ててもらったことに感謝の念しかなかったようだ。「幼少の頃の思い出」でこう振り返っている。
「実父母とはとてもくらべものにならぬ程に養い育ててもらった祖父、父母が大切でまたよかった。それは今に至るまで少しのかわりもない」
とはいえ、まもなく20歳というときに、生涯をともにするはずの人との別離は、つらく苦しいものだったに違いない。
だが、悲しみに暮れる暇もなく、セツはさらに苦しい状況に追い込まれる。明治23年に夫との離婚が正式に決まると、セツは実家である小泉家へと復帰する。
このとき小泉家もまた困窮していたが、すでに実父はなく、男兄弟は働く意思がないという体たらく。そこでセツは、これまでと変わらず稲垣家に身を置いて、養父母と養祖父を支えながら、かつ、小泉家の実母と姉や弟の暮らしまでも背負い、ひたすら機織りの仕事をすることになったのだ。
為二のように出奔してもおかしくない状態だったが、セツは耐え忍んだ。そんなとき、松江の尋常中学校へと赴任してきた英語教師が女中を探している、という話を聞く。彼の名は、ラフカディオ・ハーン。セツは住み込み女中として、ハーンのもとで働くことになった。
セツの人生が大きく動き出そうとしていた。
【参考文献】
小泉節子著、小泉八雲記念館監修『思ひ出の記』(ハーベスト出版)
小泉凡著『セツと八雲』(朝日新書)
NHK出版編『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版)
櫻庭由紀子著『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(内外出版社)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら