まもなく20歳の小泉セツ、生涯をともにするはずの夫が…朝ドラ「ばけばけ」逃亡した夫を追いかける「凄い行動力」

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とうとう、銀二郎は限界を感じて出奔。置手紙をして、松野家から出て行ってしまった。東京にいるという銀二郎を連れ戻しにいくトキ。その旅費を工面するため、勘右衛門が武士の誇りである鎧や刀を古道具屋に売り払ったのには驚いた。「跡継ぎを連れ戻してまいれ」とトキの背中を押す勘右衛門。少しは反省したようだ。

銀二郎がいい人すぎるがゆえに、なんとかトキと夫婦関係を続けてほしい……と、思わずそう願ってしまうが、それだとラフカディオ・ハーンをモデルとしたヘブンと結ばれることができず、何の物語かわからなくなってしまう。

トキと銀二郎は、離れる運命にある。それがわかっているだけになおさら切ないが、史実においても、トキのモデルである小泉セツは、一度目の結婚が破綻。そのあとにラフカディオ・ハーンと出会っている。

ドラマでの銀二郎のモデルとなった、セツの最初の夫は「前田為二」という。実際は、どんな人物だったのだろうか。

銀二郎のモデル「前田為二」は大坂に逃亡

生まれてすぐ稲垣家の養女となったセツは18歳のときに、前田家から28歳の前田為二を養子として迎えて結婚。為二は鳥取藩士で、稲垣家と同じく没落士族だったという。

ドラマでは二人とも「怪談好き」という設定になっているが、実在の為二は浄瑠璃を好み、近松門左衛門の作品を愛読していたという。為二にすすめられてセツも近松作品を読むようになったというから、ドラマとはジャンルこそ異なるが、文学を通じて親交を深めたところは同じである。

また、セツの義祖父にあたる万右衛門が婿養子の為二を武士の家にふさわしい気風に育てようと厳しく接したこと、さらに稲垣家が重い借金を抱えていて払えるあてもなかったところも、ドラマで描かれている通りである。

あまりにつらい状況に耐えかねて、為二は1年も経たずに家を出て行ってしまう。同じ没落士族として、ある程度、覚悟を決めての婿入りだったに違いないが、稲垣家の窮状ぶりは、想像以上のものだったのだろう。

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