インバウンドが実は「移民への依存度」を下げている オーバーツーリズムを批判する人が知らない、深謀な"政策思想"

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近年、「オーバーツーリズムだ」という声が一部で聞かれますが、その指摘には論理的な根拠が乏しいと考えられます。年間4200万人が来日しても、彼らが365日日本に滞在しているわけではありません。平均宿泊日数を9.0日とすると、日本全国の1日当たりのインバウンド数は(4200万人×9.0日÷365日)=約104万人となります。

これは、日本の総人口1億2000万人に対してわずか0.9%に過ぎません。仮に2030年の政府目標である6000万人に達したとしても、1日当たり約148万人となり、日本人人口比で1.2%にとどまります。

「オーバーツーリズム」は都市伝説か? 

「オーバーツーリズム」という言葉は、本来「量を測る定義」であり、マナーの問題は含まれません。X(旧Twitter)などで取り上げられる一部のマナー違反の事例や、最も混雑する時間帯のミクロな例をもって、全体像を語るのは誇張的で論理性に欠けます。

実際に京都などで「オーバーツーリズム」を主張している人々の属性を調べると、その大半が京都の住民ではない部外者であることがわかっています。

世界と比較しても、日本がオーバーツーリズムであるとは言えません。例えば、人口16.7億人のインドでは毎年、人口比57.6%のインバウンドを受け入れています。EU27カ国は人口4.5億人に対し、インバウンドが5.6億人、人口の1.2倍です。日本は6000万人目標を達成しても、その半分にも満たない比率です。

問題の根源は、星野リゾートの星野代表が指摘するように、「オーバーツーリズム」ではなく「オーバーコンセントレーション(集中)」にある側面が大きいでしょう。適切な施策で「稼ぐ」戦略を完遂する現在、出国税を3000円に引き上げることや、ビザの手数料を上げることが議論されていますが、これはインバウンド戦略の本質、「取るべきものを取る」という方向性として適切です。

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