「家事」をする男女ほど"脳が衰えない"。海外から研究結果が続々と報告――『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は脳の機能からみても正しいワケ

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音楽を聞きながら引き出しを整理する、友人と電話しながらタオルをたたむ、鼻歌を歌いながらほこりを払うなど、脳は複数の活動を同時に処理することで、より活性化されます。

シンガポールの研究を参考にすると、重い家事(少し息が上がるもの)と軽い家事(計画や記憶を要するもの)を、週を通して両方混ぜることが理想的です。月曜日は掃除機がけ(重い)、火曜日は洗濯(軽い)、水曜日は冷蔵庫の整理(軽い)、木曜日は床拭き(重い)、金曜日は庭や植栽の手入れなどの作業(頭を使う)、土曜日は風呂・トイレ掃除(重い)、日曜日は買い物(軽い)というようにするといいかもしれません。

なお、2つの注意点があります。

第1に安全が最優先です。ぐらつく踏み台に乗らない、腰に負担がかかる荷物を持ち上げない、関節が悲鳴を上げるような作業はしないなど、ケガをしないような対策をとるように。必要に応じて長い柄の道具、滑り止めマット、良い照明を使い、疲労を溜めないよう作業を1日の中で分散させましょう。

第2に、家事が慢性的なストレスの源になっている場合、心理的デメリットがメリットを上回るおそれがあります。最適なのは「無理なく動いて、考えるのに十分」な程度です。

いまだに女性に家事の負担が偏るケースも多いと思いますが、「認知症の予防になる」ことを強調し、パートナーに家事を分担してもらうのもいいかもしれません。

脳の健康に家事という頼れる一手を

世界の専門家たちは、認知症を一発で予防するお手軽な方法はないと繰り返し強調しています。

脳の健康は生涯にわたる多くの小さな予防の積み重ねです。良い教育と聴力のケア、中年期の血管リスク(高血圧、糖尿病、高コレステロール)の管理、老年期の活動的で社会とつながりのある生活、そして視力低下やうつ病のタイムリーな治療などが必要です。

このようなポートフォリオの中で、家事は特別なコストもスキルも必要としない、地味だけれど信頼できる予防法といえるでしょう。

谷本 哲也 内科医

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たにもと てつや / Tetsuya Tanimoto

1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。

 

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