「家事」をする男女ほど"脳が衰えない"。海外から研究結果が続々と報告――『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は脳の機能からみても正しいワケ
認知症予防には、“日常の動き”と“目的意識”が重要であり、家事はそれを生活に最も組み込みやすい方法の1つなのです。
■50万人を10年追跡したイギリスの研究
イギリスには「UKバイオバンク」という有名な研究データがあり、これを用い認知症の発症が調査されました。ここでは50万2629人の成人を平均10.7年間にわたって追跡しています。研究開始時の平均年齢は56.5歳で、この期間に5185人が認知症と診断されました。
参加者は最初に、家事を含むさまざまな活動の頻度を「毎日」「週に数回」「週に1回」「月に数回」「ほとんどしない」の5段階で報告しました。分析の結果、家事を最も頻繁に行っていた人は、ほとんど行わない人と比べて認知症リスクが21%低いことが判明しました。
この効果は、年齢や性別、教育、収入、家事以外の身体活動、社会的交流、喫煙、飲酒、食習慣などを調整しても変わりありませんでした。
興味深いことに、家事以外の身体活動や社交的交流も同様にリスク低減と関連していましたが、効果の大きさは同程度でした。つまり、家事はジムへの入会も特別な道具も、友人との予定調整も必要ないにもかかわらず、ほかの活動と遜色ない脳保護効果を持つ可能性が示されたのです。
「毎日家事」で認知症リスク3割減
■中国やアメリカの研究が示した家事の効果
認知症予防に家事が適しているという調査結果は、中国やアメリカからも報告されています。
中国の長寿調査では、平均年齢72.9歳の高齢者を対象に調査が行われました。「ほぼ毎日」家事をする人は、ほとんど家事をしない人と比べて、認知症リスクが実に29%も低いという結果が出ました。これはイギリスの研究よりもさらに大きな効果です。
特筆すべきは、この効果に男女差がなかったことです。
歴史的に多くの社会で女性のほうが家事を多く担ってきたため、この「効果」は単に女性の生活パターンを反映しているだけではないかという懸念がありました。しかし、定期的に家事をする高齢男性は、女性と同程度の脳への健康効果を得ていたのです。
これは、男性も家庭内で積極的な役割を担うことが、パートナーシップの公平性だけでなく、自身の脳の健康にも寄与することを示唆しています。
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