「家事」をする男女ほど"脳が衰えない"。海外から研究結果が続々と報告――『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は脳の機能からみても正しいワケ
次に、認知的な効果です。
食事の計画は作業記憶と順序立てを、洗濯や片付けは整理整頓と細部への注意を、修理や手入れは問題解決能力を使います。買い物はナビゲーション、予算管理、意思決定を必要とします。これらは加齢とともに衰えがちな注意力、記憶力、実行機能そのものです。
シンガポールの研究で、重い家事が注意力と軽い家事が記憶力と関連していたのは、異なる作業が異なるスキルを訓練することを示唆しています。
筋肉と同じように、脳は使わなければ衰えてしまう器官です。日常的にこれらの能力を使い続けることで、神経回路を維持し、認知予備力を高めることができると考えられています。
最後は心理的・社会的効果です。
家事は1日にリズムと目的を与え、気分を高め、社会的引きこもりを防ぎます。家族に必要とされていると感じることは、高齢期の無力感や孤独感への強力な対抗手段です。また、家族や友人のために料理をする、一緒に掃除をするといった活動は、社会的つながりを強化します。
多くの認知症ケアチームが、タオルをたたむ、テーブルをセッティングする、植物に水をやるなど、安全な家事への参加を奨励するのは、これらの活動が自己肯定感を保ち、体と心を関与させ続けるからです。
早期の認知症の人を家事の負担から守りすぎることは、かえって急速な機能低下を招く可能性があることが臨床現場では知られています。
週に何回、どんな家事をする?
研究からは具体的な数字はまだ判明していませんが、少なくとも「週に2〜3回 」以上、合計で週150〜300分程度の中等度の家事が効果と関連していそうです。
できれば目安として、週のほとんどの日(5日以上)に、1回あたりは短くても無理なく体を動かす家事を心がけましょう。一度に長時間やって続けられなくなるよりも、日々少しずつでも続けることが重要です。
座っている時間の合間に、5〜10分の動く作業を取り入れるのがポイントで、キッチンの調理台を拭く、2部屋分の植物に水をやる、玄関を掃く、洗濯物を片付けるなどがおすすめです。ほかにも、テレビを見る前に必ず1つの作業をする、朝のコーヒーのあとにキッチンを整えるなど、既存の習慣と合わせると続けやすくなります。
家事を楽しみと組み合わせるのも効果的です。
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