豊田通商、「スクラップ投資」の高すぎる代償 相次ぐ減損で今期の純利益は半減に

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スクラップ価格急落が直撃し、豊田通商は買収初年度である2014年度の第3四半期(10~12月期)に20億円、第4四半期(2015年1~3月期)に120億円の減損を計上。

当時は「これで減損懸念の悪材料を掃きだした」と見る市場関係者も多かったが、足元のスクラップ価格の一段安により、今回、3度目の減損を余儀なくされた。

ただし、減損の背景にあるのは価格要因だけ、ともいいづらい。金属スクラップリサイクル最大手で豪州に本社をおくシムスグループは、オペレーションコストの削減を徹底。市況低迷下でもEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースで増益を達成している。同業他社と比べ、ショルツ社の不振は際立っている。

業界関係者は「ショルツはもともと筋が悪い投資案件。株式未公開のオーナー会社で、借入額が膨らみ、銀行団から業績を改善しろと迫られている最中に、豊田通商が創業家の株に飛びついた」と明かす。社内からも「投資の審査体制に問題はなかったか」という声が上がる。

なぜショルツ社に出資を決めたのか

リスクの高い案件への投資を決断した背景には、豊田通商が非自動車事業の強化を急いでいた焦りもあるだろう。

同社は2006年のトーメンとの合併以降、2012年にアフリカビジネスに強みを持つ仏商社CFAOを総額2345億円で傘下に収めた。同年には、東京電力から風力発電で国内最大手のユーラス株20%を取得(約200億円)したほか、今年1月末にはブラジル穀物・インフラ大手のノバアグリ(250億円)を買収。資産を積極的に積み上げてきた。

一方、膨らんだのれん償却負担などにより、近年は700億円前後の純利益で頭打ち。業績は伸び悩んでいた。

市況が一段と下落する中、ショルツ社の短期間でのシナジー発現は難しかった。豊田通商は前期の減損に対する経営責任として、今年4月から3カ月間、「加留部淳社長は月額報酬の20%、担当営業部門長は15%、営業担当役員らは10%を自主返上」という役員報酬の減額を実施している。

また、「2年間で2500億円」という従来の積極的な新規投資枠を変更し、今後は「新規投資額を営業キャッシュフローの範囲内に抑制する」などの見直しを進めている。ショルツ社の株式を売却するかは未定だが、今後の追加資金拠出は一切しない方針だ。

事業拡大を急ぐあまり、案件審査の過程に緩みはなかったのか。豊田通商は投資運用体制の見直しが求められている。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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