こうなると、議員さんたちも動揺する。この保守層の支持を失ったら、自分たちは次の選挙で負けてしまうかもしれない。かくして決選投票においては、国会議員票においても高市票が小泉票を上回ることとなる。以下の通り高市氏の完勝であった。
候補者 国会議員票 都道府県票 合計
高市早苗 149 36 185
小泉進次郎 145 11 156
サプライズはあったが「楕円の理論」は健在だった総裁選
筆者は前回の拙稿で、「自民党総裁選は前回も前々回も、党員票で1位になった候補者が決選投票で敗れている。(中略)3回続けて同じことが起きたら、さすがに『どうなってるんだ?』との声があがるだろう」と心配していたのだが、どうやら杞憂に終わったようだ。自民党総裁選という「出し物」は、今後も同様なスタイルで続けられることだろう。
自由民主党は、来月15日にはなんと結党70周年を迎える。1955年に2つの保守政党が合流して誕生したのだが、ひとつは吉田茂や池田勇人、佐藤栄作らを擁する自由党、もう一方は鳩山一郎や岸信介が率いる日本民主党。前者は経済重視、軽武装を良しとするハト派で、後者は安全保障重視、自主憲法制定を求めるタカ派であった。
この2つの源流が相互に競い合い、片方が行き詰まると相手側にバトンタッチする、自民党はそうやって長期政権を維持してきた。かつて大平正芳首相はこれを「楕円の理論」と呼び、自民党は楕円のように2つの焦点を持つから強いのだと喝破したものだ。今回も岸田文雄、石破茂という「左」の政権が2代続いたから、そろそろ「右」に戻そうかというバランス感覚が働いたことになる。今回の選挙結果は確かに「サプライズ」ではあったが、見方を換えればいかにも自民党らしい柔軟な決定だったと言えるだろう。
投機筋の中には「小泉進次郎次期総裁」を想定し、株ショートのポジションをとっていたところが少なくなかったようだ。慌てて巻き戻しとなったので、週明け月曜日には株価は大幅高となった。「高市銘柄」と呼ばれる防衛、半導体、不動産、原子力などがわかりやすく買われた。そして為替は円安に振れた。これもわかりやすい動きだが、対ユーロでは一時1ユーロ=177円台という史上最安値をつけている。「高市首相誕生なら、日銀の利上げは後ずれする」という読み筋からであろう。
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