2025年ノーベル物理学賞の凄さを東大院生が解説!次世代計算機の基礎である「量子力学」の分野 「マクロなトンネル効果」観測

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よって、抵抗を測定し、その値が0でなければ、以下の図のようにポテンシャルエネルギーの壁を超えた電子が存在しているはずだ、と分かるのです。

(画像:筆者作成)
(画像:筆者作成)

ただし、この「波動関数の位相差」は、多数の電子があって初めて生まれる量です。一つ一つの電子に対する位相差を見ているのではなく、「全員が揃っている位相に対する、位相差」なのです。

左の電子は全て位相が1で、右の電子は全て位相が3だから、位相差は3-1=2である、みたいな状況です。つまり、このような状況が起きるには、たくさんの電子がトンネル効果を起こす必要があるのです。だからこそ、抵抗を測定することで「マクロなトンネル効果」を観測したと言えるのです。

また、特定の周波数の電磁波でエネルギーを与えると共鳴吸収を起こし、すぐに抵抗が生じることから、マクロな世界においてもエネルギーが量子化されていることも同時に実証されました。

原論文
John Clarke et al. ,Quantum Mechanics of a Macroscopic Variable: The Phase Difference of a Josephson Junction.Science239,992-997(1988).
https://clelandlab.uchicago.edu/pdf/clarke%20science%2088.pdf

参考
https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2025/popular-information/

スペシャルサンクス

校正協力:奥村亮太

亀田 崚 東京大学大学院理学系研究科学生・日曜劇場『御上先生』教育監修

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かめだ りょう / Ryo Kameda

2000年生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻所属。東大カルペ・ディエム所属。公立高校から一浪を経て東京大学理科一類に合格。その経験を活かし、全国の高校生や駿台予備学校お茶の水校3号館の浪人生に対して学習指導を行なっている。また、自身が大学で学んでいる物理や数学の面白さを伝えるため、メディア活動やボードゲームの開発を行なっている。日曜劇場『御上先生』教育監修。

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