着物姿の長澤まさみ「人の"いい部分"を少しずつ取り入れてきた」、キセルで絵をダメにする演技で感じた儚さと執念とは?
――監修の浮世絵師の方々からも「最初からうまかった」との声も。
子どもの頃から絵を描くのは好きでしたし、筆一本で線の強弱や濃淡を出す描き方が独特で……そういうのを真似するのが得意だったのかもしれません。
――真似をするのが得意なんですか?

得意というより……俳優ってそういう仕事なんですよね。俳優さんで本当に不器用な人はあまり見たことがなくて、皆さん運動神経もよくて器用な方が多い。不器用な人も一生懸命練習を重ねていて、それも役作りの一つ。俳優業って、不思議な仕事だなと思います(笑)。
“粋”が許した自由―江戸から現代へつながる女性像
――江戸時代の女性は社会的な制約が多かったと思いますが、演じながらどんな発見がありましたか?

確かに制約は多かったと思います。でも一方で“なかった”とも言えるのでは、と感じました。江戸時代は“粋(いき)”だと認められれば許される風潮があったそうです。着物の着こなしも、生き方も、周囲が“いいね”と認めれば受け入れられた。応為が自由に生きられた背景にも、そうした“粋”の存在があったのかもしれません。
――“粋”が一つの免罪符のように?
そうなんです。資料を読んだり専門家のお話をうかがう中で、時代の解釈は後から変わることもあると知りました。舞台『野田地図』でご一緒した野田秀樹さんが「人間は名前のないものを怖がる。だから名前を付けることで安心し、受け入れられるようになる」と仰っていたのが印象に残っています。言葉にした瞬間にニュアンスは削がれ、多少の誤差が生まれる。
法律や決まりがあっても、それが当時の人々すべてに同じように伝わっていたとは限らないと思います。
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