一歩間違えば"短命政権"に終わる可能性も… 高市政権を待ち受ける「地雷だらけ政局」の正体

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高額所得者への所得税率引き上げや株式の配当・売却益への課税強化が検討される。低所得者への給付や減税と合わせて、格差是正につながる効果もある。

ただ、自民党支持層の中には富裕層増税に反対する声も強い。経済界には金融資産への課税強化で株価が下落し、景気減速につながるという懸念もある。高市氏が難しい判断を迫られることは間違いない。

高市氏はこれまで、金融緩和や積極財政を訴えてきた。しかし、物価高が進む中で、金融政策は緩和から引き締めに転じている。日本銀行は政策金利を徐々に引き上げていく構えで、高市氏側とのすり合わせが必要となる。

植田総裁
植田和男総裁が率いる日銀と、どう折り合いをつけていくか(撮影:尾形文繁)

公共事業などの財政出動を拡大すれば、景気を過熱させ、物価高につながるおそれもある。さらに、景気対策の財源として国債を増発すれば、長期金利の上昇につながりかねない。

高市氏が独自の経済政策を打ち出そうとしても、さまざまな制約がある。その結果、物価高や格差拡大に具体的な成果が出せなければ、高市政権の求心力は低下していくだろう。

首相就任直後から試される「外交力」

高市氏は15日召集予定の臨時国会で首相に指名された後、組閣を済ませて所信表明演説を行う見通しだ。26日からはマレーシアでのASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議、31日からは韓国でのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議に臨む。

途中、27日にはアメリカのドナルド・トランプ大統領が来日。28日には日米首脳会談が予定されている。トランプ大統領は日本の防衛費の大幅増額やアメリカ製の武器購入を迫ってくるとみられる。高市氏は外相や防衛相の経験はなく、外交手腕は未知数。首相就任早々、アジア諸国との近隣外交やアメリカとの同盟国外交で力量が試されることになる。

保守派が望む靖国神社参拝などに踏み切れば、公明党や野党、近隣諸国の反発は必至だ。逆にタカ派色を封印すれば、足元の保守派の不満が募る。そうしたジレンマの中で、連立拡大を目指しつつ物価高や格差拡大への対応といった難題に取り組まなければならない。そこで成果が出ないなら、高市政権は行き詰まり、自民党政治はさらなる混迷に陥るだろう。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)、『自民党幹事長』(ちくま新書)など。

 

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