同時に、神戸の喫茶店文化を残していきたいという思いが湧き、閉業する喫茶店の家具や備品の引き取りを始めた。
「喫茶店はラーメンを出しても、漫画をたくさん揃えても、内装を生かして自由な商売をしても、やはり『喫茶店』になる。その柔軟さが大きな強みだと考えています。傷のあるテーブルを『味わい』として受け入れてもらえるから、お客さんのわがままもある程度は受け止められる。店側、客側に『許す力』があってこそ、喫茶店らしい温もりが生まれるのだと思います」
「まずはやる」で、常に新しい挑戦を

2019年3月、神戸市灘区のオフィスビル・BBプラザ内に「喫茶博物館 珈琲ポエム」を開店。
王子公園の「ローズ」、東出町の「ベニス」、元町商店街の「ウィーン」……閉業したいろんな喫茶店から譲り受けた家具・照明・備品を使った、ポエムの集大成となる喫茶店だった。
一方で、オフィスビルは近代的な雰囲気で、古き良き喫茶店というポエムのイメージとは異なる。このように雰囲気の違う場所で店舗を持つことに迷いはなかったのだろか。
「僕は何か選択を迫られたときには、まず『やる』ことから考えるようにしています。やらなければ可能性は閉じたままだけれど、やれば課題も見えてくる。神戸の喫茶店文化を未来につなげていくために、オフィスビルという新しい空間に懐かしい空間を再現する『喫茶博物館』というアイディアが浮かびました」
他の店を営業しながら開店準備をしなければならず、想像以上に大変だった。だが、成功させればさらなる飛躍ができる。そしてスタッフみんなの自信になる。そんなことを考えながら準備をしていたと山﨑さんは振り返る。しかし、開店から1年後にコロナ禍が訪れ、お客さんが激減。閉店せざるを得なくなった。
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