東京だけが"正解"じゃない──伝説の写真集『TOKYO STYLE』の都築響一氏が見る「令和の都市生活」。昔と今の共通点、そして変化とは?

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都築響一さん
都築 響一(つづき・きょういち)/1956年、東京生まれ。1976~1986年『POPEYE』『BRUTUS』で現代美術や建築、都市生活を担当。1989~1992年に全102巻の『アートランダム』を刊行。1993年、自ら取材・撮影した『TOKYO STYLE』(京都書院/ちくま文庫)で注目を集め、1997年『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で木村伊兵衛写真賞を受賞。現在もロードサイドを中心に取材を続けている(撮影:今井 康一)
『TOKYO STYLE』
スペインの出版社から2024年に英語版で再版された『TOKYO STYLE』(画像:apartamento社Webサイトより)

「今は住宅事情が80年代90年代よりも、ずっと厳しくなってきている。だから、狭い部屋に住んで、街を部屋の延長線上に使う“お金のない若者の生活”が、より身近で一般的になっていることもあるみたいです」(都築響一さん 以下の発言すべて)

時代が変われば街も変わり、暮らし方もまた変わる。

私は2024年から「だから、ひとり暮らし」という連載で、東京近郊を中心とした約20人の部屋を訪ね歩いた。取材を重ねるなかで見えてきたのは、現代ならではの暮らしの奥に見える、それぞれの試行錯誤の軌跡だった。

令和に『TOKYO STYLE』は成り立たない?

取材にあたって、都築さんが2025年に『TOKYO STYLE』を作るとしたらどんな本になるだろうか。そんな問いかけをしてみた。

「今ならもう『TOKYO STYLE』は成り立たないでしょうね。80年代90年代は、音楽にしろ出版にしろ、東京に出て来ないと実現できないことが多かったんですよ。

だから、面白い人が東京に集まっていた。でも今はインターネットによって、地方でも活動できるじゃないですか。東京じゃなきゃできないことなんてないから。

それに東京は家賃が高すぎる。たとえば若い子が下北沢で小さなお店を持とうと思ったら毎月50万円ぐらいかかってしまう。それが地方なら月々10万円で自分の店が持ててしまうわけです。

実際、地方には小さな本屋がめちゃくちゃいっぱいできているんですよ。だけど東京の出版業界では話題にすらならない。地方のお客さんのほうが10倍熱心で、イベントも盛り上がるんです。

僕はよく地方の独立系のお店で開かれるイベントに呼んでもらったりしているから、知っているんですけれど……」

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