リスボン観光の象徴「ケーブルカー事故」なぜ起きた 滞在時に見た現場、オーバーツーリズムが遠因?

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事故原因は検証中だが、ケーブルが耐用年数に満たない状況で破損しており、メンテナンスにも問題がなかったという報道がある。しかし、この国に2週間滞在すると、本当にメンテナンスがしっかり行われていたか懐疑的にならざるをえない部分もある。

それは、インフラの維持管理がうまく機能していないことが旅行者の立場からもはっきり見て取れるからだ。リスボンにはメトロが4路線あるが、駅のエスカレーターやエレベーターの半分は動いていない。中にはエスカレーターなどがあることが前提となっている地下深くにある駅もあり、その駅でエスカレーターが動いていないというのは、ほかのヨーロッパ諸国では考えにくく、アジアの発展途上国以下の状況であった。

日頃の管理が不十分

駅の発車案内なども表示されていなかったり、鉄道車両は落書きだらけのまま。窓は摺りガラスのように汚れ、ステンレス車両が錆び果てている。有料トイレの入口はコインなどを挿入してバーを倒すのだが、紙幣挿入口にはガムテープが貼られ、紙幣は使えなくなっていたり……。無料の公衆トイレに至ってはほとんどで便座がなく、鍵が壊れているほか、トイレットペーパーを入れる器具も破損、石鹸の容器はあっても石鹸は補充されていないという状況だ。できた当時のまま維持されているものなどほとんどない。修理・維持といった形跡がなく「壊れたまま」「なくなったまま」のものばかりである。乗車した路線バスがエンストし、高速バスでは乗車日の異なる切符を渡されることもしばしばだ。悪意ではないが、日頃の管理などが不十分なために起こるトラブルばかりであった。

トイレの便座と、命にかかわるケーブルカーのケーブルを同列で論じることはできないが、このような状況を体験すると、はたしてケーブルカーはきちんとした安全管理・維持が行われていたのか懐疑的にならざるを得ないのである。

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