リスボン観光の象徴「ケーブルカー事故」なぜ起きた 滞在時に見た現場、オーバーツーリズムが遠因?
現場検証などを終えると、事故現場は献花が絶えることがなかった。リスボンに2週間ほど滞在したが、献花は日増しに増えるといった状況であった。ケーブルカーはリスボン観光の象徴的な存在だったため、市民はかなりショックだったようで、主要地では国旗が半旗として掲げられていた。
事故を起こしたケーブルカーはグロリア線といい、山上駅近くにはサン・ペドロ・デ・アルカンテラ展望台がある。市民の憩いの場であり、有名な観光スポットであった。まさにリスボン観光のハイライト部分での事故だった。リスボンには街中を運行するケーブルカーがもう2路線あるが(ラヴラ線とビッカ線)、ともに今回の事故原因がはっきりするまで運休となった。
リスボンのケーブルカーは車両に動力がある
一般的にケーブルカーは山岳路線に使われる。2台の車両がケーブルでつながっていて、片方が麓駅を、もう片方が山頂駅から同時に出発し、中間地点ですれ違う。動力は山頂駅に備えられていて、ケーブルを動かすことによって2台の車両が上下する。各車両には係員が乗車し、万一に備えてブレーキ操作などができるが、通常は監視する程度で、ケーブルカーが減速したり、途中の駅ではないところで停車することはほとんどない。日本に数あるケーブルカーもこのような仕組みである。
しかし、リスボンのケーブルカーは通常と異なり、2車両はケーブルでつながり上下しているものの、動力は車両にあり、通常の電車同様にレールと鉄の車輪の粘着で上下している。運転はそれぞれの運転士が行う。いわば、ケーブルという命綱を付けた電車なのである。
通常の山岳ケーブルカーは専用のレール上を行き来し、障害物などはないが、坂の多いリスボンでは街の下と上を結ぶものなので、線路上を歩行者などが行きかい、運転士が警笛を鳴らしながら走行していた。
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