リスボン観光の象徴「ケーブルカー事故」なぜ起きた 滞在時に見た現場、オーバーツーリズムが遠因?

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もう1つ気になることがある。それがオーバーツーリズムの問題である。筆者は29年前にもポルトガルを訪れていて、当時のケーブルカーは、坂の多いリスボンの街の高台へ移動する庶民の足であり、素朴な街の風情が漂っていた。

それがやがてリスボン観光のハイライトとなり、今回訪れると、沿線は観光客でごった返していた。2023年9月3日付記事(円安や物価高でも格安「タイ鉄道の旅」の醍醐味)で、市場の中を行く列車を紹介したが、SNSなどが発達した現代、人気に火が付くと、観光客がどっと押し寄せる。「ケーブルが耐用年数に満たずに破損した」という報道であるが、その耐用年数はおそらく通常のケーブルカーの場合であり、線路内に多くの観光客が立ち入り、何度も急ブレーキを使っていたら、ケーブルの劣化は早く進むであろう。

現在、運休になっているのは3本あるケーブルカーで、トラムは運行している。トラムは性格から大きく2つに分けられる。1つは市民の足となる路線で、立派な連接車で運行する。もう1つは古風な単車で運行の観光路線で急な坂を上り下りする。観光路線にはバスが並走していて市民はバスを利用する。トラムは観光客で常に満席、運行時間もおおむね日没までなので、観光路線に徹している。

欧州域内は国内気分で旅行できる

沿線は観光客であふれている。日本からの観光客はわずかだが、韓国や中国からは定期航空便があり、ヨーロッパ内からは格安航空便がひっきりなしにやってくる。クルーズ船も毎日、最大で4隻が接岸される。トラム沿線は欧米からの大量の観光客、自撮りをするウェディング衣装の韓国人、モデル気分でポーズする中国人で賑わう。

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