橋下徹氏は今年8月まで維新の党代表だった 法廷闘争で露になる維新の党の自己矛盾

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維新の党の党規約によれば、党の代表選は代表の任期が終了する年の9月に行わなければならない(第8条第4項)。同規約は代表の任期を3年と定めている(同条第3項)が、結党時に暫定的に共同代表制を採用したため、江田憲司前代表の辞任により代表に就任した松野氏の任期は、今年9月末日までとなっていた。よって9月内に代表選を行うべく、準備が行われていた。

党勢拡大のために国会議員も一般党員も「1人1票」という画期的な制度が採用され、積極的に党員募集が行われた。これによって9135名だった党員数は5万2696名と、4万3561名も増加した(9月4日現在)。党費2000円をかけると、8712万2000円もの増収になる計算だ。これを一元的に管理していたのは、大阪の維新の党の本部である。

党費があるのは三井住友?りそな?

しかし安保法制で通常国会が9月27日まで大幅延長されたことで、月内の党大会開催は不可能と判断された。よって維新の党執行部は9月10日に党大会を延期し、党費を返還することを決定した。これについては分裂した後の東京も大阪も、その意向に変わりはない。だが実際のところ、党費の返還は極めて困難な状態だ。維新の党の議員がその事情を説明する。

「大阪は、集めた党費を三井住友銀行の口座で管理していたはずだった。この口座は凍結されていないので、我々は党費の返還を求めていた。ところが大阪は、党費は凍結されたりそな銀行の口座に移していたので、出すことができないと言ってきた」

だがそれでは、大阪側も自分たちが集めた党員に党費を返すことができない。

「我々は、双方の合意に基づいて党費の金額分だけ口座凍結を解除しようと提案したが、大阪側は自分たちが集めた党員の党費の解除のみを主張してきた。それでは我々が集めた党員には、党費は返還されないことになってしまう。これはとうてい受け入れることができない」(同議員)

その背景に、党員の構成がある。松野氏側によれば、新規党員数は激増したが、そもそも大阪系の国会議員が集めたのはその6%未満にすぎず、地方党員が集めた分を含めても10%に満たない。橋下氏はとかく維新の党を「自分が作った党」と大阪の優位を主張するが、実態はそういう構成ではないというのだ。

ちなみに今回の分裂騒動の原因のひとつが、この「東西格差」だと言われている。「代表選を控え、このままでは東京側に主導権を握られてしまうと焦った大阪系が分裂に走った」と解されている。

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