実際のところ、このような主張は単なるまやかしにすぎない。南シナ海における領土紛争に対する中国の態度を完全に理解するために、1つの見方がある。何世紀もの間、中国はこの地域で圧倒的な最大最強の国家であって、周辺海域を支配し、大部分の隣国を下位の属国として扱っていた。
中国が例外的に弱体化した2世紀にわたる空白の後、中国は急速に力を取り戻しつつあり、中国が考えるところの東アジアの古き良き秩序を回復したいと思っている。
言い換えれば、中国は、米国と同じように、自らの領土周辺の陸海空を支配する権利があると感じるような超大国になりつつある。中国は、米国と同等の存在、世界における2大超大国の1つとなることを目指している。その結果、中国の指導者たちは、中国が軍事力を誇示し、戦略上重要とみなす地域を防衛できなければならないと信じている。
このことは、他国が関係しない限り、理解し難いことではなく、必ずしも不合理なことでもない。米国は確かに、隣国を扱う際、ある種の権利意識を示している。しかし、カナダもメキシコも現在のところでは、中国の多くの周辺国のように、侵害や恫喝を受けているとの感覚は持っていない。
また、米国は戦略的な動機で国際貿易や輸送の自由な流れを脅かしてはいないが、中国の場合、確かにそうしているのではないだろうか。米国と中国を同等の超大国と考えるにしても、米国がずっと広範な国際的な支持や受け止めを得ていることに留意するのは重要だ。将来は状況が変わるかもしれないが、当面は、これが現実である。
「東シナ海」の逆手を取るべし
疑いもなく、中国は突進を続け、主権主張を裏付けるために「既成事実」をさらに積み上げようとするだろう。少なくとも平和的手段によって、これに反対する唯一の方法は、中国の主張は認められないと一貫して示し続けることだ。中国の言う「事実」とは見解にすぎないのだと、はっきりさせねばならない。
そのためには、中国が主張を試みている海域において、軍艦や商業船など、あらゆる種の船舶が航行する形で、理想的には多くの国が連携して、定期的に介入する必要がある。これは結局、中国自身が東シナ海で用いている戦術だ。中国は、東シナ海にある日本の尖閣諸島 (中国名: 釣魚島) 周囲の海域に船団を派遣している。
日本の領海における中国の行動は違法である可能性があるが、自らの主張を通している (しかもほとんど毎日、明確な形で行っている)。米国とその同盟国は、南シナ海で同じことをしなければならない。そのようなことをすれば偶発的な衝突や対立の危険が生じる。しかし、何もしなければ、あるいは単発的な動きにとどまれば、中国に既成事実を与えるだけなのだ。
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