「病院の赤字」は努力不足なのか?7割の国立大病院が赤字のなか、広島大学病院が「10億円超の利益」を出せたワケ《病院長を直撃》

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
新病院が建設されるJR広島駅北口付近(写真:筆者撮影)

広島大学病院はJR広島駅の南に位置するが、新病院は反対側の駅北口から歩いて数分の好立地だ。新病院の病床数は現在、最終調整中で、800~1000床規模になるとされている。

JR広島駅北口の新病院の存在

地元メディアや医療関係者などは、新病院を広島大学病院の「ライバル」と煽るが、どうなのだろうか。

「高度急性期といった診療領域では、重複する部分も出てくるが、狭い地域でライバル視して競争してもしょうがない。機能分担しながら、互いに協力していく。県立広島病院には広島大学医学部出身の医師も少なくないので、ライバルであると同時に仲間だと考えている」(安達さん)

実は広島県には、医療機関がなく、住民が容易に受診することができない無医村(無医地区)が多い。厚生労働省の2022年度調査でその数は53。全国では北海道(64)に次いで2番目という深刻な状況だ。

安達さんは「広島県は高度医療提供体制が充実する反面で、無医村が多いという現実がある。新病院が当院と一緒に、県外にいる医師に対する求心力を高めて、広島で働きたいというムードを醸成していきたい」と語る。

前年度よりも減ったとはいえ、黒字化を実現させている広島大学病院。文部科学省から黒字経営の秘訣についてヒアリングがあったり、国立大学病院長会議でも、“広大さんはどうやって黒字を維持しているのか”と聞かれたりすることがあるという。

今回の取材を通して、同病院の黒字経営の背景には、ウルトラCのような秘策がないことがわかった。診療科ごとの収支チェック、こまかなコスト削減の積み上げが黒字を生んでいた。

文部科学省も同病院に着目し、今年8月にとりまとめた国立大学を健全に運営するための改革の指針に「診療科別の収支分析をさらに推進することで経営効率化を図る」という文言を盛り込んだ。

安達さんは「黒字経営とはいえ、(黒字額は)1年で半分に減っているので、環境が厳しいのは変わりがない。どこの大学病院も、これをやったら大きく経営改善するようなものはないだろう。小さい改善策をこつこつとやっていくしかない」と話す。

君塚 靖 えむでぶ倶楽部ニュース編集部 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

きみづか やすし / Yasushi Kimiduka

証券・金融畑の記者を経験した後、医療系記者に転身。2018年1月にメディカル・データ・ビジョンに入社。同社情報誌「えむでぶ倶楽部ニュース」編集部で医療・健康情報のデジタル化と位置付けられる、人が一生涯の健康・医療情報を自ら管理できるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)についてや、コロナ禍で非接触型医療の新たな形として注目されるオンライン診療などについて執筆している。同社の医療情報サイト「めでぃログ」ポータル(https://portal.medilog.jp/)向けにも記事を執筆している。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事