「病院の赤字」は努力不足なのか?7割の国立大病院が赤字のなか、広島大学病院が「10億円超の利益」を出せたワケ《病院長を直撃》

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「そうなのですけれど……。でも、経営が厳しいのはほかの国立大病院と同じ」と話すのは、病院長の安達伸生さんだ。

実際、医薬品費や診療材料費の上昇などが業績を圧迫し、前年度は20億円超あった経常利益が半分に。それでも踏みとどまっているのは、「経営企画グループが中心になって取り組んでいる経営改善策が実を結んでいるからではないか」(安達さん)と話す。

病院長の安達伸生さん(写真:筆者撮影)

同病院の病床稼働率や入院診療単価といった経営指標を見ると、国立大学病院のなかではトップではないものの、おしなべて上位にある。

黒字経営を続ける意義について、安達さんは「黒字を確保することで、医療現場が必要とする最新の医療機器などを購入できたり、医療従事者の処遇改善に資金を回せたりするなど、物や人への投資が可能となる。いろいろと切り詰める必要もない。いい医療を提供することで患者さんが集まり、外部資金が集まるという好循環を生む」と言う。

黒字の要因の1つに、広島大病院は2013年9月に外来棟を立て替えて以来、建築物の大型投資がないため、有利子負債への依存度が低水準であることが挙げられる。国立大学病院平均で60.69%(2023年度)のところ、広島大学病院は33.22%。2024年度は29.63%だ。

データ利活用で経営状況を可視化

もう1つの要因が診療データの分析、バブルチャートでの可視化だ。

診療科ごとに業績のフィードバックをしている病院は珍しくないが、同病院は、原価計算に基づく収支分析にまで踏み込んでいる。原価計算とは、売り上げに対してどれだけの費用がかかったかを見る指標のことだ。

診療科ごとに原価計算をするためには、建物の維持費や水道光熱費などを病院全体の費用としたうえで、病棟や診療科ごとに費用を細かく割り当てていくことが肝要だ。そのうえで診療科ごとの売り上げと照らし合わせて、収支を分析する。

同病院では四半期に一度、診療科ごとに収支チェックをしている。

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