「病院の赤字」は努力不足なのか?7割の国立大病院が赤字のなか、広島大学病院が「10億円超の利益」を出せたワケ《病院長を直撃》
たとえば、購入にも維持にも莫大なコストがかかる医療機器の購入にあたっては、2018年度から医療機器ディーラーの元社員2人を購買担当として採用した。医薬品価格の交渉のほか、高額医療機器の購入の際には、1社だけでなく相見積もりを取るよう徹底している。
一般企業からしたら当然のことなのだが、同病院ではそれまでこうした対応をしてこなかったという。
このほか、コスト削減につながる後発薬品の使用割合に関しては、国立大学病院の中でワースト2(2023年度)、今後の改善項目の1つだという。
外科医に月10万円プラス支給
興味深いのは、病院経営を圧迫する要因である医師などの医療スタッフの人件費については、コストアップをいとわず、若手医師、特に外科医に対してインセンティブを付与する取り組みを始めたことだ。
若手医師の最近の傾向として、ワークライフバランスを重視しがちで、手術や術後のケアなどで長時間労働になる外科を敬遠しがちだ。
そこで、同病院では外科離れを食い止めようと、2025年度から外科医を目指す研修医に対して、「未来の外科医療支援手当」を新設し、一律で年120万円を支給している。
これについて安達さんは、「バタフライ効果といいますか、一羽の蝶が羽ばたくと竜巻が起こるとまでは期待していないが、まずは第一歩を踏み出そうと思った。この取り組みがほかに波及して、外科医増加につながってほしい」と語る。
安達さんがこの施策を打ち出した背景として、若手医師には研究にも意欲的になってほしいとの思いもあったことを明かす。
大学病院には診療、教育、研究という3つの役割がある。研究論文の質的観点で、ほかの論文からの引用回数の多い論文数を表す「Top10%論文数」がある。同病院では、中国・四国地方の医学部のある10大学において、2024年までで6年連続で1位となっており、これからもトップを維持することを目標に掲げている。
また、影響度(他紙への引用数)が最も高いランクに分類される学術雑誌「Q1論文数」に収録された、臨床力の評価指標とされる臨床医学領域の論文数が2021年度に全国10位(中四国地方1位)で、今後も質の高い医学論文を数多く発表できるよう努めていく方針だ。
広島県は2030年、県立広島病院、県立二葉の里病院(旧・JR広島病院)、中電病院、広島がん高精度放射線治療センターの4施設を統合し、新病院を開院する計画がある。新病院では、高度医療を提供する体制を整える予定だ。
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