子どもの遊びだった《ガチャガチャ》はなぜ大人を魅了する"体験消費"に進化した? 1400億円市場へ急成長する"商業施設の主役"の正体

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「散策しながら選ぶ時間そのものが、『ガチャガチャの森』におけるお客様の楽しみになっているのだと思います」

“宝探し気分”を支えるジャンル配置と棚割りの工夫

中川さんは、ガチャガチャの魅力は「コト消費」「トキ消費」「エモ消費」の3つを同時に楽しめる点にあると説明する。

「回す行為そのものが楽しいのがコト消費。何が出るかわからない、その場限りの瞬間を味わうのがトキ消費。そして友達と見せ合ったり、会話が盛り上がったりするのがエモ消費です。ガチャガチャは、この3つを同時に楽しめる稀有な体験なんです」

ガチャガチャは単におもちゃを買うだけではない。1店舗に600〜800面、大型店では2000面以上という豊富なラインナップを誇る店舗に足を踏み入れると、動物、食べ物、キャラクター、そしてちょっと変わり種までバランスよく配置されている。

顧客は「自分に刺さる商品がある」という期待感を持って巡る。この「宝探し」のような体験自体が、顧客の楽しみになっているのだろう。

(筆者撮影)

そして、売れ筋だけを並べるのではなく、店頭に幅広いジャンルが並ぶようバランスを調整しているという。

「もし売れるものだけに偏ってしまえば、ファンシーな商品ばかりになったり、キャラクター商品ばかりになったりして、楽しさが失われてしまいますから」

月に600〜700種類の新商品が登場し、人気商品は数週間で売り切れる。この「次に来たときにはもうないかもしれない」という一期一会のドキドキ感も顧客を惹きつける要素だ。

「ガチャガチャの森」をきっかけに、メーカー側の商品開発も加速した。

「私たちからメーカーさんに『専門店を作るから、もっと商品を開発してほしい』とお願いしました。もともと、専門店を成立させるには商品数が足りなかったんです」

さらに、現在では価格帯も幅広くなっている。かつては200円の商品が主流だったが、いまは300円から500円が中心に。値段は上がったものの、その価格に見合う以上のクオリティを実現しているのが現在のカプセルトイだ。筆者が見た商品も、小さなフィギュアなのに細部まで作り込まれており「昔と違う!」と驚いた。

「バスの降車ボタンなら、実際に押すと本物と同じ音が鳴る。小さな電子玩具のように音や光が出る商品もあります。フィギュアやミニチュアの造形も非常に精巧で、『これを500円で買えるのか』と驚いてしまうような商品が数多くありますね」

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