子どもの遊びだった《ガチャガチャ》はなぜ大人を魅了する"体験消費"に進化した? 1400億円市場へ急成長する"商業施設の主役"の正体

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

店内でお客さんを観察してみると、だんだん傾向がわかってきた。まずは両替機に一直線。その後、キョロキョロしながら、店内をぐるりと廻る。はじめから何かお目当てがあるわけではなく、偶発的な出会いを楽しむ人が多数派だ。

一人のお客さんは、商品をじっくり眺めながら、自分との対話を深めている。手元のバッグの金具と、ガチャガチャを交互に見つめる人は、購入後の活用をイメージしているのか。女子高生のグループは「これだったら、どれが出ても可愛いよね」と、限られた予算を何に使うかというテーマの会話。カップルは「ねえ、見てこれウケる」と、ガチャガチャのラインナップから商品をピックアップし、それに対しどう思うかという会話を繰り返していた。

ガチャガチャの森
ガチャガチャの森梅田茶屋町店(画像:ルルアーク)

筆者の記憶にある、子どもの頃のガチャガチャは、もっとミステリアスなものだった。すごいのかすごくないのか、よくわからないおもちゃの写真が貼られていて、実際にガチャガチャを回すと、写真とは似ても似つかないものが出てくる。回す瞬間がピーク。出てきた瞬間にがっかりし、最後は親から小言を言われるまでがセットだった。

何となくわかってきた。ガチャガチャのお客さんは単におもちゃを買っているわけではない。ガチャガチャという「体験」を楽しんでいるのである。いつの間に、ガチャガチャはこれほどまでの進化を遂げていたのか。筆者は福岡県にあるガチャガチャの森の運営会社、株式会社ルルアークの本社へ向かった。

急成長するカプセルトイ市場

株式会社ルルアークは、1958年にピーナッツやおみくじの自販機オペレーターとして創業した。1970年代にはアミューズメント施設事業に進出し、「FESTA」「ふぇすたらんど」「Niko Niko Garden」など、地域密着型の複合型施設を全国に展開してきた。その延長線上に誕生したのがカプセルトイ専門店である。

2014年に「Pon!」1号店を出店し、2017年に「ガチャガチャの森」がスタート。従来はスーパーの隅に数台が置かれていたガチャガチャを、1店舗あたり600〜800面、大型では2000面超を並べる専門店型のスタイルに進化させた。スタッフを常駐させ、補充や接客まで行う点も特徴である。

こうした成長性に注目し、2025年4月にはオリックスがルルアークの全株式を取得した。オリックスは新規出店や物流体制の強化、人材採用の拡充を後押しし、さらなる成長を支援する方針だ。実際、カプセルトイ市場は2024年度に約1400億円(製造出荷元ベース)と、前年から2割増の規模へ拡大している。ルルアークはまさに、その成長市場の中心に立っている。

次ページ「ガチャガチャの森」が誕生した背景
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事