エルピーダメモリ争奪戦、交錯する各社の思惑 終焉を迎えた、日本のDRAM産業
今年2月に経営破綻したエルピーダメモリをめぐって、各社の思惑が激しく交錯している。
会社更生手続きの下、支援企業の選定を進めているエルピーダは4月末に第2次入札を実施。早ければ5月の連休明けにも支援企業を決定する見通しだ。更生計画は8月21日が東京地裁への提出期限となっているが、その大枠は、遠からず明らかになりそうだ。
3月末の第1次入札には、破綻前からエルピーダが支援を求めてきた米マイクロン・テクノロジーのほか、韓国のSKハイニックス、東芝といった半導体企業に加え、企業再生ファンドの中国ホニーキャピタルと米TPGキャピタルも共同で応札したようだ。両ファンドは中国レノボ・グループと関係が深く、エルピーダ争奪戦はパソコンメーカーをも巻き込んだ混戦模様を呈している。
このうち、東芝は入札金額が低かったことなどから、1次入札で脱落。今後は2次入札に残った候補と手を組む方向で調整している。「数社と手を組んで、それぞれが欲しい部分を分け合う」(東芝首脳)。相手は、MRAMと呼ばれる次世代メモリで共同開発を行うハイニックスが有力だ。
そもそも、東芝は単独でエルピーダのスポンサーになることに当初から及び腰だった。理由は簡単で、過去にDRAMで痛い目に遭っているからだ。日本の半導体メーカーは1990年代後半以降、大赤字に陥ったDRAMから次々と撤退。その流れで生まれたのがエルピーダで、同社には日立製作所、NEC、三菱電機のDRAM事業が集約された。東芝も2001年に撤退、米国工場をマイクロンに売り渡している。
このため、DRAMに対する東芝の感情は複雑で、「リーマンショック後の危機の際、エルピーダの坂本幸雄社長が救済を求めてきたが、東芝はそれを蹴った過去がある。今さらDRAMには一銭も出したくないはずだ」(東芝の元役員)との声もある。